2024年11月22日(金)

プーチンのロシア

2024年10月17日

盛り返しているのは中国から欧州の輸送のみ

 かくして、一時はロシア・ウクライナ戦争という地政学的事件により斜陽化しかけた中欧班列のトランジット輸送が、紅海危機という別の地政学的事件により息を吹き返したのである。いくらロシアやベラルーシを経由する鉄道輸送が不安を抱えているとはいえ、フーシ派が武力攻撃を仕掛けてくる紅海ルートよりは、今のところ安全である。それに加えて、料金的なメリットも生じてくれば、「意識低い系」の荷主が中欧班列の利用を再開するのは、当然の成り行きだ。

 ただし、中国とEUの貿易不均衡にも関連して、以前から中欧班列では西航(中国→欧州)に比べて東航(欧州→中国)の輸送量が少ないという問題があったが、図3に見るように、24年に入っても東航にはまったく勢いがなく、盛り返しているのは西航だけである。

 これは、東航においては荷主がEU企業の場合が圧倒的に多いはずなので、コンプライアンスの意識がより高いことに起因しているのではないかと、筆者は推測している。また、上述のとおり、23年2月に軍事転用可能な汎用品をEUからロシア領を通じて第三国に輸出することが禁止されたので、EUの荷主が東航利用を手控えた可能性もある。

 このように中欧班列は、アジア・欧州間でモノを運ばなければならない企業にとり、条件次第では利用価値のある「裏技」と言える。しかし、荷主は常に、地政学リスクにつきまとわれることになろう。

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