2024年11月22日(金)

プーチンのロシア

2024年10月17日

 一帯一路の基本理念は、中国と欧州という大市場間を輸送回廊により接続するという点にあったはずで、旗艦プロジェクトの中欧班列もそれに資する輸送スキームという位置付けだった。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻後は、ロシアのいびつな「東方シフト」のはけ口となり、単に露中の二国間貿易の輸送手段という意味合いが強まることとなった。

紅海危機という神風

 このように、ロシアのウクライナ侵攻後、中欧班列の東西間トランジット輸送路としての存在価値は、揺らぎかけた。ところが、23年暮れくらいから、再び状況が変わり始める。

 図3は、中欧班列のうちERAのトランジット輸送分を、中国~欧州のコンテナ海上運賃と対比しつつ示したものである。24年に入ってから、トランジット輸送量が目に見えて盛り返している。

 もともと中欧班列は、スピードは遅いが料金が安い海運と、スピードは速いが料金が高い空運との、丁度良い中庸を占める輸送手段であった。海上運賃が上昇すれば、中欧班列の競争力が高まり、需要が増加する。図3からは、ERAのトランジット輸送量が中国~欧州のコンテナ海上運賃の上昇と軌を一にして進んでいることが読み取れる。

 それでは、ここに来てなぜ中国~欧州の海上運賃が上昇しているのか。その原因は一つしか思い当たらない。紅海危機がそれである。

 世界の海運のボトルネックとなりうるような要衝を「チョークポイント」と呼ぶが、図4はその中でもメジャーなパナマ運河、スエズ運河、喜望峰回りの月別船舶通過数を跡付けたものである。24年に入り、(必然的に紅海を通過する)スエズ運河の利用が激減し、それと反比例するように喜望峰回りが急拡大したことが見て取れる。

 パナマ運河では降雨不足により23年8月からしばらく通航制限が課せられ、スエズ運河には部分的にその迂回ルートとしての役割も期待されていた。ところが、23年11月半ば以降、紅海でイエメンの武装組織フーシ派による商船に対する攻撃が発生し、アジア⇔欧州間でモノを運ぶ多くの船が紅海・スエズ運河を避けアフリカ南端の喜望峰を回るルートに迂回することを迫られたのである。

 当然、輸送日数とコストは上昇することになる。図3で今年に入り中国~欧州の運賃が上昇しているのも、その影響によるものである。


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