旧態依然の選挙運動スタイル
今回の選挙でも候補者の多くは旧態依然たる選挙運動スタイルを守っていた。公会堂の大きなホールを借りて平日の夜、1時間半から2時間かけて演説会を開く。そこでは次々とほかの選挙区の、いわゆる大物政治家が何人も登壇して当該候補者がいかに優れた政治家であるかをいろいろな角度から語る。
聴衆をそれなりに納得させる話もあるが、肝心の候補者の話は時間が短くて、集まってくれた人たちに対するお礼やお願いなど内容のない話が多く、候補者の人柄や政策に対する理解が深まる機会とはならない。
そういう選挙をする候補者はたいてい、駅頭演説でも選挙カーや政党の大きな選挙カーにいわゆる大物政治家の名前を書いた垂れ幕を掲げ、聴衆はその人たちの演説を聞かされる。ここでも候補者本人の話はあまり聞くことができない。
そういうやり方をすべて否定するわけではないが、いわゆる大物政治家の話ばかり聞かせるのは本末転倒ではないか。東京では、政治資金の問題を理由に自民党の公認を得られず無所属で立候補し、地域の小集会を重ねて当選した人が今回、複数いた。
国政選挙ではないが、自民党都議会議員として6回、杉並区で当選を重ねている早坂義弘氏はふだんから後援会をつくらず、選挙の集会も開かず、団体やグループへの出席や駅頭・街頭での演説と日頃の戸別訪問そして内容の濃い政策情報紙の発行によって有権者の支持を受けている。
認めるべき戸別訪問
小集会や戸別訪問は一方的な演説でなく候補者本人と有権者の双方向だから有権者にとっても候補者の人柄や重点政策を知るよい機会となる。候補者にとっても市民の声を直接聞き取るよい機会となる。現在の選挙制度は戸別訪問を禁止しているが、一定の制限をつけて解禁すべきではないか。
公明党は伝統的に、地域の公明党支持者が自宅の近所を立候補予定者と一緒に回って有権者に紹介することをやっていた。公明党の自治体議員はたいてい大学ノートを持っていて、そこに有権者の意見や要望が具体的に書かれていた。今でもそういうことは行われていると思うが、政策は国会の建物内部における議論だけでなく、そういう現場の声からも形成されるものであってほしい。
筆者が英国訪問中に何度か選挙を見る機会もあった、英国の選挙では戸別訪問が合法であり、むしろ戸別訪問が選挙運動の中心だと聞いた。選挙カーが走り回るようなことはなく、ポスター貼りもない。
候補者は夜間、有権者の家を訪問して投票を依頼し、有権者はそれが意見を伝える機会となる。日本は英国の小選挙区制度を導入したが戸別訪問は合法化しなかった。そろそろ見直すべきではないか。