2024年12月22日(日)

お花畑の農業論にモノ申す

2024年11月6日

 このような背景からか、間に挟まった小里泰弘農林水産相は、就任時の会見で「水田の活用」を問われ、「主食用米に代わり飼料用米を中心に水田のフル活用を進めていきたい」とか、「農業者の所得向上が我々の最大のテーマだ。農業者への直接支払いを中心に進めていきたい」とやや複雑な答弁であった。

 なお、自民党の公約には、「水田政策を見直す」というくだりもあるが、具体的な中身はないと評価されている。(読売新聞)

公明党

 「水田活用の直接支払い交付金等について、予算を恒久的に確保する」として、自民党と大差はない。

国民民主党

 「環境加算、防災・減災加算を含む<食料安全保障基礎支払い>(直接支払い)を導入する」とある。米や麦、大豆なら作付面積、家畜なら頭数に応じて交付金を支払い、農家が農業を続けられる「基礎所得」を保証する。米は10アール2万円程度を想定している。

 水田活用直接支払交付金の「5年に一度の水張り」要件については、離農と耕作放棄地が増える原因となることから「地域事情に応じて柔軟に緩和」としている。

 この公約は、筆者が想像するところ、「生産の継続に必要な岩盤としての直接支払い」による所得の保証だから、<価格は競争で、所得は経営政策で>という石破農政プランにも共通するものと考える。

 作物転換ではない手法で、これまでの自民・公明の農業政策の転換になって、むしろ、欧州連合(EU)やアメリカ(不足払い)の農政手法と親和性があり、世界の潮流にも乗る格好だ。

 なお、玉木雄一郎代表が言及している「家畜数に応じた支払い」は、EUにおいて、過剰飼育をもたらし失敗した例がある。また、EUの直接支払いは、市場価格への補償措置という位置づけから変化を続け、いまでは、農地の条件などに応じた地域支払い、気候変動への対応に応じた環境支払いに重点を移行中である。

立憲民主党、日本維新の会、共産党

 立憲民主は、かつての戸別所得補償制度を農地に着目した制度に拡大強化、日本維新の会は、輸出を大幅拡大し、国内需要に合わせた生産からの切り替え、共産は、国家の介入・統制を強める公約を掲げている。

いまだ残る〝自民党農政〟

 小里大臣が言及した「飼料用米生産を中心とした水田のフル活用」に大義はあるのだろうか。穀物が食用から飼料用まで品質・価格に応じてなだらかな傾斜で消費されていくのは、ごくごく自然なことである。


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