2024年11月22日(金)

バイデンのアメリカ

2024年11月8日

・通常、大統領候補が当選を果たした場合、掲げる政策ビジョン実現には4年間の執政では時間的余裕がなく、再選を目指すのが普通だ。しかし、トランプ氏の場合、年齢的問題(4年後には83歳)もあり、自ら「次回選挙に出馬しない」と公言している。「今回選挙で選ばれた場合、1回目の任期中に果たせなかった政策目標を徹底して推し進める」とも事前に語って来た。

 このため、来年1月20日の就任早々から、移民問題、エネルギー、政府部内改革、外交などでいきなり大胆な政策を打ち出すことが予想され、その結果、内外に混乱、ひずみを引き起こす可能性も否定できない。現に、トランプ氏は選挙戦を通じ「自分は、就任1日目以外は独裁者として統治しない」と述べ、就任早々にも“荒療治”で臨むことを示唆してきた。

トランプ政権、共和党への不安

・次期トランプ政権で最も懸念されるのが、経済対策だ。

 まず、法人、個人所得などの「トランプ減税」がある。法人税については、税率を21%から15%に引き下げを予定し、個人税についても減税を公約に掲げているが、実現した場合、一時的に企業、個人にとって収入増につながるが、積極的な財政策でインフレ再燃、そしてより深刻な財政赤字を招きかねない。

 また、関税政策面でも、すべての国の輸入品に一律10~20%、中国からの輸入品に60%課税方針を打ち出している。その結果、輸入に大きく依存する一般消費者向け物品への価格転嫁が行われ、これまで以上の物価高につながる恐れがある。

 トランプ氏は選挙戦で「生活者を苦しめている今の異常な物価高から解放する」と公約してきたが、逆にインフレを悪化させ、一般消費者の不満を高じさせかねない。

・トランプ氏は選挙戦最終日の演説で「恐怖と分断の政治に終止符を打つ」「この国が直面するあらゆる問題を解決する」と豪語した。また、勝利確定後の演説でも「米国を再び安全で、豊かで、力強く、自由な国にする。今度こそ4年間の分断を過去のものとする」と高らかにうたい上げた。

 しかし、短兵急に大胆な政策を打ち出すことで、政治と社会の分断がかえって深刻化し、さまざまな直面する問題を解決できなかった場合、「公約違反」で国民の批判が高まり、支持率低下につながる可能性もある。“空手形”の評判が広がれば、次回大統領選に痛手となる。

・トランプ氏は28年大統領選について、「わが党の候補はJ.D.バンス副大統領候補だ」と断言してきた。しかし、共和党も民主党同様、4年後に向けて今後、バンス氏以外にも有力者が候補者として名乗りを上げてくることが予想される。

 その中でもし、バンス氏が最終的に党指名候補となった場合、多くの弱みを抱えている。年齢的にまだ40歳と若く、過去、上院議員としてわずか3年の政治経験しかなく、また、今後4年、副大統領を務めたとしても、独断専行を旨としてきたトランプ大統領の下で、独自の存在感を発揮する機会は少なそうだ。

 さらにバンス氏は、思想的にもこれまで、女性蔑視、反体制弾圧など、トランプ氏以上に極右的で、過激な言動を繰り返してきただけに、次回大統領選で厳しい批判にさらされかねない。


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