漁獲規制を比較してわかるやるべきこと
それでは何でこんなに漁獲量に差がついてしまったのか? その最大の原因はメスの漁獲と考えられます。ノルウェーと甲羅の幅規制はほぼ同じ(北海道の大ズワイガニ除く)であり、漁獲可能になる年数も8~10年とほぼ同じです。
しかしながら、メスの漁獲について日本は漁獲、さらに産卵期に漁獲しています。一方で、ノルウェーだけでなく、日本がズワイガニを輸入しているアメリカ・カナダでもメスは漁獲していません。
日本が輸入している国々は、メスを漁獲しても海に放流します。そしてメスは産卵して資源が持続的、もしくは増えていきます。またズワイガニはオスとメスでは大きさがかなり違います。
メスは可食部が少なく価値はオスよりかなり安いです(価値は3分の1前後)。日本が輸入している各国は、科学的根拠に基づくTAC(漁獲可能量)と、大抵それを漁船や漁業者に配分する個別割当制度(IQ,ITQ,IVQ)などで配分しています。
このため、経済的に価値が低いメスは放流するという仕組みです。ノルウェーの場合は、規制が甲羅で95ミリメートル(㎜)以上ですが、そういう大きなメスは存在しないので、メスは水揚げされません。
魚卵を重宝するという点では、日本が輸入しているタラコや数の子といった魚の親であるスケトウダラやニシンなどは産卵期にも漁獲しています。ただし、これらの魚種は上記のような資源管理制度が徹底されているため、資源が持続的です。このため、卵を持っている魚を毎年漁獲しても問題がない状態が続いているのです。
上の写真は卵を持ったメスの写真です。ツメや足の肉の可食部はオスに比べてほとんどありません。現状の日本の漁獲規制では大幅に資源が回復して、かつての1万トンレベルの水揚げに戻ることなど神頼みしてもないのです。
上のグラフは漁獲量が多いズワイガニの日本海系群A海域の分布です。そして下のグラフが漁獲したカニの内容です。
赤のカタガニ(雄で身が詰まっているカニ)の漁獲は良いのですが、問題は緑の雌ガニと青のミズガニの漁獲です。ミズガニとは脱皮したての甲羅が柔らかい価値が低いカニのことです。京都府と石川県ではすでに自粛していますが、鳥取・島根・兵庫・福井県は漁獲を続けています。雌ガニとミズガニの漁獲は実にもったいないです。