下のグラフはズワイガニの年齢と甲羅の幅を示しています。国の規制である甲羅の幅90㎜以上になるためには8~10年もかかることがわかります。カニの資源回復には時間がかかるのです。
消費者として国産ズワイガニを食べるためには
ズワイガニの需要は、23年は、米国がロシアのウクライナ侵攻で22年に同国から輸入を止めたことで価格が落ち着いていました。しかしながら、世界の水産物需要もカニの需要も増加の一途です。
例えば昨年中国が日本からの水産物輸入を止めました。ホタテガイ業界では、それまで主力だった同国向けの輸出が止まり、先行きが懸念されました。しかしながら中国向けが止まっても他の国の需要が増えて、23年の輸出金額は逆に増えて、価格は上昇傾向です。
今後、ズワイガニ相場は再び上昇傾向に転じていくことでしょう。その際にカニを食べ続けるために頼るのは、本来は国産のはずです。メス漁獲を大幅制限して産卵を助けて資源を回復させて行くべきなのです
こういう話をすると、よく出てくるのは、日本が我慢しても韓国が獲り過ぎるといった外国が悪いという類の話です。上の漁場図に韓国の海域も入っています。
ところでノルウェーの隣国はロシアです。両国は資源に関してはウクライナ侵攻に関わらず協調体制にあります。資源を獲り過ぎるべきではないことを、両国は乱獲の歴史で身に染みてわかっているからです。
ちなみに大西洋のズワイガニの資源は、ロシアとノルウェーが共有しています。25年のノルウェーの漁獲枠は1万3000トン(前年度の700トンの超過分が引かれる前)に対してロシアは1.6万トンです。両国合わせて約3万トンです。日本のズワイガニ漁獲量は全部で約2000トンです(23年)。
漁獲枠ゼロから始まったノルウェー(12年から漁獲開始)とロシア(11年から同)は、資源管理の成功により、昔からズワイガニを漁獲していた我が国の10倍以上の漁獲量となっています。
我が国の少し増えた程度とはレベルが異なります。かつてのようにズワイガニの漁獲量を回復させるためには、メスの漁獲を制限するのが、他国の成功例からすると現実的ではないでしょうか?
下は、ズワイガニ(日本海系群A海域)における規制のまとめです。効果がある資源管理を進めるためには、社会の理解が必要です。
残念ながら「教育」という面でそれが不足しています。そこでまずは、俯瞰(ふかん)してズワイガニの資源とメスの漁獲について、その全体像と本来やるべきことの理解を進めていただければ幸いです。