2024年4月27日(土)

科学で斬るスポーツ

2014年2月7日

母の死を乗り越え、独り立ち

 技術だけでなく、精神的な成長も大きい。3年前の2011年に最愛の母、匡子さんを失った。二人三脚で築いてきたスケート人生の大きな転機となった。何から何まで自分でこなし、車も運転するようになった。「精神的な自立は、浅田を大きくした。それは演技の強さにでている」と湯浅教授は話す。

バンクーバー五輪・金メダリストの金姸児との勝負の行方は…… (写真:青木紘二/アフロスポーツ)

 ただ、五輪ではやはり金妍児が気になるところ。4年間、金メダリストとして世界から注目されながら、強くたくましく成長してきたはずだ。右足甲のけがから立ち直り、今年1月5日の韓国選手権では、公認記録ではないもののバンクーバーで出したパーソナルベストに迫る227.86点を出している。

 金姸児に対抗するため、浅田は今回、SP、フリー合わせて、トリプルアクセルを3回飛ぶと見られていた。フリーは、前回より大幅に基礎点が上がり、「金メダルにかける史上最高のプログラム」と評価する専門家も多い。ただ、浅田は5日、「今回はトリプルアクセルは2回」と語り、どういう構成にするか注目される。金妍児は、フリー後半に3回転+3回転の大技を組み合わせてくる。国際大会にでていないため、審判員への心象面では浅田の方が有利ともいわれるが、本番にミスをしない演技は、多くの大会で実証済み。さらに、この二人に加え、ロシアの15歳、ユリア・リプニツカヤが新星のごとく登場した。今季世界第2位の209.72点をだすなど侮れない存在となっている。

 日本時間の2月20日放送される女子フィギュアスケート。艱難辛苦を乗り越えて、4年間の集大成をかけて臨む浅田。ほかに日本からは円熟味を増し安定感のある鈴木明子(28)、波に乗れば未知数の力を持つ村上佳菜子(19)が出場し、上位に食い込む可能性はある。その活躍も楽しみだ。

 男子は、羽生結弦(19)がどんな滑りをみせるか。サルコウとトーループの2種類の4回転ジャンプを跳び、身長171㎝のスラッとしたスタイルが繰り広げる演技は、何よりも大きな魅力だ。この1年間、急成長し、最大のライバルであるカナダのパトリック・チャン(23)との勝負も見どころだ。こちらも目が離せない。

*ソチ五輪特集(1) 女子スキージャンプ 高梨沙羅
*ソチ五輪特集(2) スピードスケート 長島圭一郎・加藤条治

■5ページ「金妍児は、フリー後半に3回転+3回転の大技を2度組み合わせてくる。」について、筆者の取材に基づき、より正確な表現に訂正致しました。(2014/02/10 11:10)
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