2024年4月27日(土)

科学で斬るスポーツ

2014年2月7日

図2:フィギュアスケート靴のブレードを滑走方向と垂直にするか、トーピックを氷上に立てて、ブレーキをかける。(提供:池上康男教授)

 幅跳びの踏み切りは、靴と地面の摩擦がブレーキの引き金となるが、フィギュアスケートでは、どうだろうか。普通に滑っているときにどんな一流選手でもブレーキはかけられない。そこで、踏み切り直前に、(1)スケートの刃(ブレード)を滑走方向と交差するように横向き(図2)にする(2)ブレードのつま先(トー)にあるピック(ギザギザの部分)を氷に立てる――。この2通りの方法で、ブレーキをかけるのである。ブレードを横向きにしてエッジ(端)でブレーキをかける(1)のタイプを「エッジ系」と、トーピックでブレーキをかける(2)のタイプを「トー系」のジャンプと呼んでいる。のちに詳しく説明するが、浅田の得意とするトリプルアクセルは、エッジ系である。

加速はブランコの原理

 次によく弧を描きながらぐいぐい加速していく姿を見かけるが、これは「ブランコの原理」を応用している。立ってブランコをこぐときは、地面に近づいたときに、身体を縮めた後、脚を伸ばしながら強く押し、体の重心を内向きに向ける。同じことが氷上でも行われる。池上教授は「遠心力に逆らって身体の重心を内側に移動させると加速し、外側に移動すると速度は小さくなる」と説明する(図4)。選手がジャンプする前に曲がりくねっているのは、加速し、助走速度を高めているのである。

図4:カーブの内側に重心を移動させて加速。(提供:池上康男教授) 拡大画像表示

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