2024年11月22日(金)

患者もつくる 医療の未来

2014年2月11日

 一つ目は、届け出や調査の対象範囲についてです。

 原案では、医療機関が医療事故調査の第三者機関に届け出る対象の事故について「当該事案の発生を予期しなかったものに限る」という要件がつけられています。

 医療行為には合併症があり、薬には副作用がありますが、「手術の合併症に出血多量がある」「陣痛促進剤の副作用欄に子宮破裂が記載されている」から、出血多量や子宮破裂で死亡するようなケースでも、「予期できる範囲だから届け出をしない」というような理屈になってしまわないかが気になります。

 二つ目は、実施主体を都道府県単位としている点です。

 原案では、病院の内部で事故調査をする際のサポートや、第三者機関による事故調査の実施は、都道府県単位で登録された「支援法人・組織」(都道府県医師会、医療関係団体、大学病院、学術団体等)が行うこととされています。

 しかし、このような都道府県単位では、調査メンバーを、同じ大学や同じ医師会に属しない人にすることができず、かばいあいのない公正中立な事故調査にはなりにくいと思います。実際、死因究明のモデル事業や、医療機関の評価をするシステムでは、もっと広い範囲をカバーするブロック制を敷いて、実際の調査メンバーは他の都道府県の人が担当するという工夫がされています。

 他にも、医療機関が第三者機関に事故調査を申請しないと決めても、遺族が申請をして調査をしてほしいと願う場合の仕組み、調査費用の当事者負担の問題、医師法21条にある、異状死を医療機関が警察に届け出る義務との関係、など、いくつもの論点がありますが、被害者や遺族たちがこだわってきた最も大切なことは何でしょうか。

医療が健全に育つために

 それは、医療界の隠蔽体質をなくすことです。事故を隠すのではなく、事故の原因分析をして再発防止につなげる仕組みを構築することです。

 そのために被害者らが願っていることは、事故を起こしたことより、それを隠したりごまかしたりした方が罪が重い、とする価値観や文化の醸成です。なぜなら、起きてしまった事故は再発防止につなげてもらうことで唯一生かされますし、隠蔽はその再発防止への道を閉ざしてしまうからです。


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