トランプは中東で新たな火を点けることで、そこで既に燃えていた火を鎮火する自らの能力を弱めてしまう。そして、かえってイスラエルの極右の連中――パレスチナ人のガザからの強制移住の数少ない支持者――に縛られているように見られかねない。
トランプの移住発言は、就任第一週の躁病的な命令・追放・禁止の連発後に現れたある主題をよく示している。トランプはその全方位砲火によって、自分が決着をつけられる以上の数の闘争を始めている。
トランプは外交政策で幾つか良い構想を持っている。とりわけウクライナ戦争を 2022 年のロシアの侵攻に報酬を与えない形で終わらせるという考えは良い。しかし彼は悪しき構想の連発と、一度にあらゆる場所であらゆることをするかのような焦点の定まらないやり方によって、良い構想も危険にさらしてしまう。
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日本も看過すべきではない
トランプ大統領は就任後、矢継ぎ早に問題のある発言や行動を打ち出しているが、ガザからパレスチナ人をエジプトやヨルダンに移住させ、そこに一時的、あるいは恒久的な居住地を建設するとの発言は、トランプの問題発言の中でも群を抜いて実現可能性も適切さもない暴言であると判断される。ヨルダンとエジプトが拒否反応を示しているが、当然の反応であろう。
この提案は、パレスチナ人を将来のパレスチナ国家の領土になるべき土地から強制的に追放する提案である。イスラエルの極右政治家、ベングヴィールやスモートリッチのような人の他に支持する人はイスラエルにもほとんどいないのではないか。中東和平は 2 国家解決の道しかないが、それを不可能にする提案であると評価せざるを得ない。
日本としても、こういうトランプ発言を看過するのはとるべき態度ではない。アラブ諸国、欧州諸国その他と協議し、国連総会等の場での発言を非難する決議をする動きをするか、そういう動きに参加するかが日本のとるべき態度であるように思われる。