ケララ州ではイスラム教徒も戒律から自由になれる?
インドでは北西部を中心にイスラム教徒が全国に居住しており、町なかの宿に泊まっていると夜明け前にモスクの尖塔のラウド・スピーカーから流れてくる礼拝を呼び掛けるアザーンの大音響で目が覚める。
筆者の観察ではインドのイスラム教徒の女性はコーランの教えに従い顔を隠す服装を遵守している。宗派や地方の宗教慣行により異なるらしく顔全体を覆い隠すブルカ、目だけを出して頭部全体と顔を覆うチャドル、頭髪を隠すだけのヘジャブ(スカーフに近い)などがある。いずれにせよインドでは現在のサウジ・アラビアよりも厳格に服装規定を守っているように思われる。それゆえインドではイスラム教徒の女性が外出先でフツウに顔を見せることはない。
ところがケララ州で筆者は仰天する光景を目撃した。ケララ州の人気観光地バルカラの街角のレストランに旦那と一緒に入って来たイスラム教徒の女性がテーブルに着くと同時にチャドルを脱いで顔や頭髪を晒しておしゃべりを始めたのだ。
さらに海岸沿いのカフェではやはり家族で来ていた複数の若いイスラム教徒の女性が同様に顔や頭髪を晒してシーブリーズを楽しんでいた。彼女たちの母親や親戚と思われる同席している年配の女性たちはチャドルを着用していたが。
筆者は35年ほど前のイランを思い出した。当時のイスラム革命後のイランでは宗教警察が監視しており女性が顔や髪の毛を露出する乱れた服装を取り締まっていた。列車やイラン航空機の機内でも監視員がおり、さらに厳格なイスラム教徒の男性の目がありイラン国内では一歩家から外へ出れば女性はチャドルやヘジャブを脱ぐことは許されなかった。
ところが、フランクフルト行きのルフトハンザ機がテヘラン空港を離陸して水平飛行に移った瞬間の出来事が忘れられない。欧米とイラン人の女性客が全員一斉にチャドルやヘジャブを脱いで髪の毛をほどいたのである。飛行中のルフトハンザ航空の機内は既にドイツだったのだ。
ケララ州では宗教的束縛が緩いという暗黙の共通認識がなければイスラム教徒の女性は自由な装いができない。やはりケララ州は特別なのだ。
人前で自由に飲酒できるケララ州
イスラム教徒同様にヒンズー教も飲酒を五大罪の一つとしており、インドでは禁酒州や禁酒地域があり法的に飲酒が許容されている州でも大っぴらに飲酒できない。例えばビールやウイスキーの瓶を街中で持ち歩くことは禁止されている。袋やバッグに隠して運ぶのだ。また飲酒も特定の認可されたバーでのみ許される。公認の酒屋も街外れでひっそりと目立たぬよう営業している。ホテルやホステルでは施設内での飲酒を禁じている。
宿泊施設内で公然と人前で飲酒できるケララ州はやはり非インドである。
以上 次回に続く