マスク・チームの20代のプログラマーたちは、節約案件を探し出し、財務省、国務省、保健福祉省等に侵入し、予算400億ドルの国際開発庁は事実上閉鎖され、何万もの公務員が解雇や停職に追い込まれた。政府効率化省のスタッフは機密情報から政府職員の個人情報まで膨大なデータにアクセスし、プライバシーや国家安全保障上のリスクが生じている。
この効率化を目指すとされる動きは、政府機構を破壊すると共に、その優先課題を押し通し、反対派を無力化すべく行政府の権限を強化することを隠蔽するために利用されているように思える。
政府効率化省による決済システムをコンロールしようする動きも、トランプ政権による連邦政府の供与や融資を凍結する試みと一致する。両方とも、議会が承認した支出を大統領が拒否することを違法とした1974年の法律に挑戦し、力の均衡を立法府から行政府側に傾けようとする動きのように思える。
議会が無気力な今、憲法秩序を守るのは裁判所の役割だが、トランプ政権が矢継ぎ早に繰り出す命令や活動は、民主主義活動家や裁判官が事態について行くのを難しくしている。ヴァンス副大統領は、大統領による公務員解雇の動きを止めようとした裁判所の判決を大統領は無視できる、と示唆した。他のポピュリスト政権と同様、トランプ政権は自分たちの意図や計画を邪魔したとして裁判官たちをも非難する可能性がある。
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大統領令の一部差し止めの可能性
このフィナンシャル・タイムズ紙の社説は、的を射た良い社説である。イーロン・マスクが率いる政府効率化省(DOGE)がやっていることには、多くの問題がある。連邦政府機関の廃止、資金供与の凍結、政府職員への辞職の強要などは単なるリストラをはるかに超えて、憲法が定める三権分立と力の均衡を変えようとするものであるとの指摘は、妥当な指摘であろう。