米国の国家歳出を決める予算権限は、憲法上、議会に与えられており、議会が承認した支出を大統領が拒否することは違法である。シューマー上院院内総務が、政府効率化省に政府支出を決めたり、プログラムを停止したりする権限はなく、ましてや省庁を丸ごと閉鎖する権限などないと述べたことが、この社説に引用されているが、その通りである。
トランプが矢継ぎ早に繰り出す命令の中には、国籍付与についての出生地主義の廃止など、憲法上の問題があり、差し止めになっているものがあるが、今後そういうケースが頻発するように思われる。また、関税措置についても恣意的に発表されているが、関税はいくつかのラウンドで相互引き下げがなされてきたのであって、それに違反すると米国が訴えられるケースも頻発するのではないか。
三権分立は危機に
このDOGEをめぐる騒動は、三権分立や法の支配という民主主義の根幹にある理念を否定する大きな問題であり、危機意識を持って考える必要があろう。そうしないと、トランプとイーロン・マスクが、米国を大統領が議会や裁判所に優位に立つ、チェック・バランスがない非民主主義的な国家にしてしまう危険があるように思われる。
優れたデマゴーグとそれに説得される選挙民の組み合わせが民主主義をダメにした例は、ワイマール共和国のように、これまでにもあったことを考える必要がある。