2025年4月17日(木)

田部康喜のTV読本

2025年2月23日

 『御上先生』のなかでも傑出した俳優は多い。ドラマの伏線となっている、教師・冴島悠子(常盤)の不倫事件を“報道”した神崎拓斗役の奥平大兼は、米アカデミー賞の国際長編映画賞の日本代表作品を受けた『Cloud』(2024年、黒沢清監督)のなかで、転売屋役の菅田将暉を助ける謎の助手役が異彩を放った。平凡なフリーターが実はある組織に属していた。

生徒役にも力の俳優たちがそろう

 御上先生(松坂)は、生徒たちと触れ合うなかで「オカミ」と呼ばれるようになる。半ばからかいと、半ば敬意を込めて。その御上が気にかけているのが、神崎だった。

 神崎は、自分が暴いた不倫スキャンダルの末に、冴島(常盤)の家庭が崩壊したうえに、その娘の弓弦(堀田)が殺人事件を引き起こしたことに深く悩んでいた。冴島が働くコンビニにいって、謝るとともに本当に不倫があったのかを尋ねる。冴島はもう近づかないように強く神崎にいうのだった。

 御上は、拘置所に入っている弓弦(堀田)と面会して、殺人事件の真相を突きつける。弓弦は、社会に抗議するために実は爆弾を用意していったが、不発だったために、たまたま受験を早めに終えて席を立った、渋谷(沢村)を刺し殺したのだと。

 「それで、なにか世の中は変わったか?」と、御上は弓弦に問いかける。答える間もなく弓弦は面会室を出る。

面会室で繰り広げられる迫真の会話

 神崎は、拘置所に入っている弓弦(堀田)のもとに面会を求めるが、拒否される。面会をするために、弓弦に幾度も手紙を送った末に、弓弦は御上が同行することを条件にして受諾する。

 神崎と弓弦との面談シーンは、本作のひとつのクライマックスである。芝居の迫真のセリフのやりとりを思わせる。

神崎役の奥平大兼(右)が面会室で繰り広げる迫真の演技

弓弦 あんたが神崎君。3秒で終わるね。2度と私の人生にかかわらないで。

神崎 どうして僕を殺さなかったのですか。あなたの家庭を壊したのは僕だ。

弓弦 知らなかったから。あんたの手紙が来るまで、あんたの新聞のことなんて知らなかった。

御上 でも、つらかったよね。唯一信じていた母親に裏切られ、母親がいなくなった家で父親になじられ続けた。  

弓弦 うるさい!

弓弦役の堀田真由

神崎 (弓弦が殺した渋谷友介の母親の)渋谷さんに会ってきました。この人は考えている。考え続けている。だから、僕たちが止めていいわけではないんです。

弓弦 偉そうに!ガキが!

神崎 偉くないよ。俺もあんたも同罪だ。

 面会室をでると、神崎は床に崩れ落ちる。御上は、支え起こすのだった。


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