2025年4月17日(木)

インドから見た世界のリアル

2025年2月25日

 しかも、新興国の台頭で、ヨーロッパの経済的影響力も、相対的に下落しつつある。1980年代には、例えば、主要7カ国(G7)が世界のGDPの6割を占めていた。G7の内、4カ国、英仏独伊がヨーロッパで、ヨーロッパの影響力の象徴だった。しかし、過去30年、グローバルな自由貿易の中で経済成長した新興国が台頭し、現在では、G7のシェアは4割程度になった。

 G7に新興国を加えた枠組みであるG20と比べると、G20のGDPは世界の85%を占める。新興国の重要性が相対的に高まり、ヨーロッパの重要性は相対的に落ちていることを示している。

 英国際戦略研究所の軍事費のデータで見ても、12年の時点で、北大西洋条約機構(NATO)に加盟しているヨーロッパ各国の軍事費の合計は、アジア各国からオーストラリアとニュージーランドを除いた軍事費の合計に追い越されてしまっている(The Military balance 2013, pp.255-257)。アジアはより大きな軍事費を使って、より大規模な軍事力を保有していることになる。

魅力的なインドの存在

 だから、ヨーロッパは、本来なら、もっと本気になって、改革しなければならない状況にあるはずだ。その一例が、フォンデアライエン委員長のインド訪問だろう。

 アメリカにトランプ政権が成立し、アメリカとヨーロッパの関係に緊張が走っている。ヨーロッパは、アメリカに頼りすぎてきた。トランプ大統領は、ヨーロッパに冷たい態度をとって、もっと安全保障上の負担をするよう迫っているものとみられる。

 ヨーロッパは、もっと、新興国と協力して、自らの経済力をつけ、軍事費も増やし、力を取り戻さなければならないのだ。そのためには、インドのような新興国との協力が必要だ。だからインドなのである。

 23年のG20首脳会談以来、インドとの間では、インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)という、インドから中東(サウジアラビアとイスラエル両方が含まれ、両国の協力が前提となる)を経由してヨーロッパにつながる経済回廊の構想が進められている。25年2月の米印首脳会談で、トランプ大統領とモディ首相も、この構想に言及した共同宣言を発している。

 この構想は、ヨーロッパにとってチャンスだ。もっと進めていきたい。だからヨーロッパにとってインドは魅力的なのである。


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