2025年3月31日(月)

オトナの教養 週末の一冊

2025年3月1日

孔子をとらえ直す

孔子復活 東アジアの経済成長と儒教
マイケル・シューマン(著)、 漆嶋 稔(訳) 日経BP 3300円(税込)

孔子復活 東アジアの経済成長と儒教
マイケル・シューマン(著)、 漆嶋 稔(訳) 日経BP 3300円(税込)

 著者は、ウォールストリート・ジャーナル紙とタイム誌の特派員としてソウルや北京での取材経験が長い。その中で感じ取ったのが、儒教、孔子の存在だ。本書は、孔子=論語を通じて、東アジアを理解しようとする試みである。論語の解説に加え、時代の変遷で、孔子像も変化してきたことも分かる。例えばマックス・ウェーバーは、守旧的な儒教からは資本主義は生まれなかったと論じたが、第二次世界大戦後、日本と「四小龍(韓国、台湾、香港、シンガポール)」で経済成長が起きたことから、むしろ儒教の向学心、倹約精神が、その成功につながったとして評価されるようになったのだという。

日本経済の謎が解ける

物価を考える デフレの謎、インフレの謎
渡辺 努 日本経済新聞出版 1980円(税込)

物価を考える デフレの謎、インフレの謎
渡辺 努 日本経済新聞出版 1980円(税込)

 コロナ禍によって、30年にもわたる停滞の波がさらに揺るがされた日本経済。物価と賃金が変わらない「慢性デフレ」の現象は、日本人の「価格は据え置かれる」という消費者の硬直性にあった─。2022年春以降に起こったインフレについて著者は、健全な経済循環に戻っただけの物価の正常化だと指摘する。その原因について、コロナ禍での「社会規範=ノルム」を例に述べるなど、経済と生活をつなぎ合わせて解説してくれる。

経済の力が人々に与えた影響

読みだしたら止まらない 超凝縮 人類と経済学全史 アンドリュー・リー(著)、 黒輪篤嗣(訳) 東洋経済新報社 2200円(税込)

読みだしたら止まらない 超凝縮 人類と経済学全史 
アンドリュー・リー(著)、 黒輪篤嗣(訳) 東洋経済新報社 2200円(税込)

 かつて高級な乗り物だった旅客機は、飛行速度の向上とワイドボディ機の登場で一度に多くの人を運べるようになり大衆化した。乗客が空港でチケットを購入するようになると、乗り遅れが発生しないよう決済速度の早いクレジットカードが開発されたという。経済発展の裏側には格差拡大など、様々な問題もあるが、人々を豊かにしてきたことは間違いない。世界経済の歴史を事例とともに解説する本書は、経済学の初心者でも楽しく学べる一冊だ。

Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。
Wedge 2025年3月号より
食料危機の正体 日本の農業はもっと強くできる
食料危機の正体 日本の農業はもっと強くできる

ロシアのウクライナ侵攻により、世界的に「食料危機」が懸念されるようになった。それに呼応するように、日本政府や農林水産省、JA農協などは食料危機をあおり、多くの国民は戸惑っている。確かに、担い手の減少や農産物の価格高騰、肥料・飼料の不足など、日本の農業には課題が山積みだ。しかし、新しい技術や発想で未来を切り拓こうという動きもある。日本の農業を強化し、真の「食料安全保障」を実現する方法を提示する。


新着記事

»もっと見る