メルボルン郊外のアグリツーリズム
オーストラリアではメルボルンの発展が続いていて、最近では500万人を超える人口を擁し、シドニーを抜いて全豪第一の大都市となった。人口増加に伴ってかメルボルンの近郊農業が元気だ。
メルボルンの中心部から車で1時間あまり行ったところにモーニントンという町があり、海に突き出した半島の形をしたなだらかな丘陵地帯によく手入れされた畑が広がっている。冬でも気温が10度を下回る日は珍しいということで、農業用ハウスをつくる必要がなく路地栽培ばかりで生産可能だ。
露地栽培の畑の中に、日本の屋敷林みたいに木立に囲まれた家々が点在し、農業用水を兼ねた調節池のような池や湖があって美しい農村風景を見ることができる。この田園地帯の中心にメリックス・ゼネラル・ストアーという、近隣コミュニティーの人びとのネットワーク拠点がある。レストラン、地場産農作物及び加工品ショップ、ワイン販売店などを兼ねていて、名前がゼネラルというとおり日常必要品が何でも入る店である。
店の外観は、このあたりにある農家の巨大な倉庫と変わらず、屋根には一面、太陽光パネルが敷き詰められている。レストランは100席以上もある大きなもので、内部のデザインはロッジ風で洒落ている。窓が大きく、店内からは周辺の緑豊かな風景を眺めることができる。テラス席では、風を感じながら食事ができる。
野菜や果物、畜産品など地元の新鮮な食材を季節ごとに変わるメニューで朝食やランチあるいは手作りケーキを提供するレストランは、昼食時間に訪ねると地元の人びととおぼしき客でほぼ満席だった。この店は十分に利益を上げながらコミュニティセンターの役割を果たしている。
この店の近くにテン・ミニッツ・バイ・トラクターという著名なワイナリーがある。トラクターで10分以内にいくつものブドウ畑を持っているというのがブランド名の由来らしく、ワイナリーの入口に看板代わりにトラクターが置いてある。
この店では客が各種のワインの味を確認しながらワインを購入するシステムをとっている。もちろん試飲のみでも構わない。試飲は有料である。
ワインの試飲は暗い貯蔵庫ではなく、緑を眺めながら洒落たカウンターで行うのでそれ自体が快適である。近くには温泉やスパ、ハイキングコースも整備されている。農園を眺める好位置には農家ホテルがあり、それなりに高価な宿泊料をとっている。
モーニントンの町がメルボルンの発展に上手にリンクして栄えていることは納得がいく。コミュニティセンターを兼ねた直売所や農家レストラン、地元産品を使ったお酒の試飲ができる場所、スパやハイキングコース、宿泊施設は、日本各地の農村にも存在する。このようなことができる町は日本の大都市周辺にたくさんある。日本でもアグリツーリズムがもっと発展していいはずだ。
