2024年11月21日(木)

日本の漁業は崖っぷち

2014年3月18日

 そんな中、水産庁が北太平洋海域のクロマグロの未成魚(3歳・30kg未満)について、2015年以降の漁獲量を2002~2004年の平均から50%削減する方針を示しました。2013年の中部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)では、15%の削減のみで決まり(「クロマグロも崖っぷち  水産庁『メジマグロ食べないで』のワケ」)、削減と言っても漁獲が既に減少している前年比からの削減ではないため、前年と同量獲っても問題はなく、効力が期待できないものでした。15~25%の規制では10年先に3万トン程度しか回復せず、2.6万トンといわれている現在の資源量は過去最低値に近づいています。

 削減率を50%にすれば7万トン台に増える可能性も出てくるそうです。そもそも、大西洋では30kg未満の未成魚の漁獲は禁止であるのに対し、日本を中心とする北太平洋海域でのクロマグロ漁は98.8%が未成魚であり、卵を産めるようになる前に獲ってしまうので大きな問題となっています。水産庁は、9月に開かれるWCPFCの小委員会までに各国に規制案を示す予定です。「大漁を崇める日本の文化」(「『大漁』崇める文化  乱獲と暴落の『赤信号』を止められない制度」)も改めるべきです。

 しかし削減にあたり、重要な点が出ていません。それは「どうやって50%を減少させるか」です。現在の制度では「自分の分は極力減らされたくない」という意識が強く働きます。そこでオリンピック競争での早獲り競争となってしまうのです。どんなに小さなマグロでも「獲れるものは獲る」という意識が働いてしまいます。制度がないために「小型のマグロは獲らないで欲しい」という意図は通じません。そこで漁業先進国では常識となっている個別割当制度の導入が不可欠なのです(「『獲れない、売れない、安い』深刻な事態に直面する日本の漁業」)。

 2013年の北部太平洋巻き網漁連のマグロ漁は309トンと2012年の191トンに比べ数量は60%増ですが、単価がキロ当たり1,064円と半分以下のために、肝心の水揚金額は3億2,900万円と24%減となっています。漁業者にとって重要なのは数量ではなく、金額のはずです(「漁業者は『14年ぶりのサンマ不漁』を嘆くべき?」)。個別割当を導入して水揚げを分散させれば、水揚げされる魚の品質が向上し、単価も上昇することになります。

ノルウェーで30年ぶりにクロマグロ漁再開

 漁業先進国のノルウェーでは、今年ほぼ30年ぶりにクロマグロ漁を再開することにしました。期間は6/25~10/31。漁法は巻き網で、漁獲枠はわずか約30トンです。30隻がノミネートしましたが、漁獲できるのは1隻のみです。ノルウェーの漁獲の大半を占める巻き網船には、通常オブザーバーは乗っていません。しかし、この漁にはオブザーバーが乗船し、漁獲推移のタイムリーな報告が課されています。その費用は漁船持ちです。資源管理の重要性を理解しているノルウェーの巻き網漁船は、このように積極的に協力しますし、儲かって仕方がないこともあり実際にはクロマグロがなくても経済的には十分成り立っています。

クロマグロの漁獲にノミネートしたノルウェーの巻き網船の中の1隻(写真:ノルウェー青物漁業協同組合)

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