2025年3月18日(火)

トランプ2.0

2025年3月13日

MAGAたちに不人気なゼレンスキー

CPAC2025で演説をするドナルド・トランプ米大統領

 MAGAたちはウクライナ問題をどのように捉えているのだろうか。筆者は、CPACの会場で、彼らに直接聞いてみた。

 まず、南部サウスカロライナ州からCPACに参加した元歯科医で現在は退職したチャールズ・ウィルソン氏(仮名)は、こう語った。

「欧州は何もできません。トランプはディール(取引)ができます。解決策を見つけることができます。邪悪な男(プーチン)とも」

 彼の見方を借りれば、ウクライナ問題でトランプは悪魔と取引をすることになる。民主党支持者から見れば、トランプとウラジーミル・プーチン露大統領との取引は、「悪魔と悪魔の取引」になるかもしれない。

 ザ・ウォルフ・グループ(本社南部バージニア州)というコンサルティング会社に勤務するアシュリー・ミラー氏は、「ウクライナは腐敗しています。我々の税金はウクライナで消えています」と述べた。彼女はウクライナに対してかなり懐疑的な見方をしていた。

 商業用不動産介入などを行うマーカス&ミリチャップ(本社西部カリフォルニア州)の社員ベンジャミン・ハジエリアス氏もウクライナの腐敗を指摘した。

 中央アジアのウズベキスタンのカラカルパクスタン(自治共和国)出身の移民で、現在、米国立衛生研究所(NIH)に勤務している女性も、ゼレンスキーに否定的であった。彼女は、トランプの「ガザ自治区所有」発言と関連づけて以下のように話した。

「カラカルパクスタンには鉱物資源が埋蔵されています。トランプはガザ地区を所有すると発言しましたが、カラカルパクスタンも所有してもらい、鉱物資源を開発してもらいたいです」とトランプに対する期待を述べた。その直後、一転して怒った表情を浮かべながら「ゼレンスキーは我々の税金で私腹を肥やしています」

 そのような確固たる証拠はないのだが、彼女はそう信じていた。

ウクライナ支援とMAGAたち

黄金のシューズを履くMAGA運動の支持者

 MAGAたちの間では、ゼレンスキーの好感度は低い。それは数字にもはっきり表れている。

 トランプとゼレンスキーの会談決裂後に行われた英誌エコノミストと調査会社ユーガブの全国共同世論調査(2025年3月1~4日実施)によれば、「全体」で43%が「好感が持てる」と回答したのに対して、35%が「好感が持てない」と答えた。ところが、2024年米大統領選挙でトランプに投票した支持者に限ってみると、「好感が持てる」が19%まで減り、逆に「好感が持てない」が68%まで増える。約7割のトランプ支持者がゼレンスキーに対して好感を持っていないのだ。

 同様に、トランプ支持者は「全体」と比較すると、ウクライナに対して同情的ではない。同共同調査では、「ロシアとウクライナのどちらに同情的か」という質問に対して、「全体」でロシア3%、ウクライナ56%、「どちらでもない」31%であったのに対して、トランプ支持者はロシア6%、ウクライナ36%、「どちらでもない」50%であった。「全体」と比べると、ウクライナに対する同情が20ポイントも低く、「どちらでもない」が19ポイントも高い。

 CPACの年次大会で、マイク・ジョンソン下院議長(共和党)が、MAGAたちに向かってウクライナ支援について尋ねると、彼らは一斉に「No!」と答えた。トランプとJ.D. バンス副大統領支持の文字の入った白い帽子を被って、筆者の前の席に座っていた現役の海軍の男性は、ジョンソンのこの質問に対して、立ち上がって拳を振りかざし、「No!」と叫びながらウクライナ支援反対の意思を表明していた。彼の熱心度が過激に映ったのか、シークレットサービスがやってきて、彼に自制を促すほどだった。

 ウクライナに対する軍事支援に関する同世論調査の結果もみてみよう。「全体」は35%が「減少させるべき」と回答したのに対して、24年米大統領選挙でトランプに投票した支持者に限ってみると、その数字は64%でまで上る。「全体」よりも約30ポイントも高いのだ。

 また、「トランプはロシアとウクライナのどちらに同情的か」という質問に対して、「全体」で、ロシア43%、ウクライナ10%、「どちらでもない」29%と答えた。米国民は、トランプはロシア寄りとみている。

 しかし、前回の大統領選挙でトランプに投票した支持者は、ロシア13%、ウクライナ15%で、ウクライナがロシアを2ポイント上回り、第3の選択肢である「どちらでもない」が54%と最も高く、最多の回答者を得た。彼らは、トランプは仲介者として中立な立場をとっているとみているのだ。

 さらに、ロシアとウクライナの戦争に対するトランプの政策の支持率は、「全体」で「支持する」が40%、「支持しない」が45%で支持が不支持を5ポイント下回った。ところが、24年米大統領選挙でトランプに投票した有権者に限ってみると、「支持する」が77%で、「支持しない」の11%を66ポイントも上回った。


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