2025年3月17日(月)

古希バックパッカー海外放浪記

2025年3月16日

 インドでは人の見ているところで酒瓶を持って歩くことは許されないようだ。酒を買うと必ずオーナーや店員が外国人である筆者に酒瓶を紙袋やバッグに隠して運べと注意する。ましてや公衆の面前で酩酊して高歌放吟したり騒いだりするインド人をみかけたことはない。それゆえ夜の巷で酔っ払いが連れ立って歩いている日本の繁華街のような光景はインドではあり得ない。
だからといってインド人が一般に飲酒しないということではない。インド人は隠れて酒を飲んでいるというのが実態である。

インド男は賭け事も好きなようだ。どこの漁村でも漁から戻った漁師が集まってポーカーに興じている

インドで酒を飲む場所は3分類されるが大きな違いはお値段

  1. 一番安上がりなのは酒屋で買って家に持ち帰り家というプライベート空間で飲むという“家飲み”である。筆者の場合は主にホステルに持ち帰りラウンジや庭で飲んでいた。
  2. 次は酒屋で酒を買って支払いそのまま酒屋で飲む方法である。この場合も公衆から見えないようになっている。酒屋の奥に簡単なカウンターがあるケースや、郊外だと酒屋の外によしず張りして椅子やベンチが置いてあるケースもある。この場合はピーナツやゆで卵などごく簡単なつまみを酒屋が売っていることもある。さらに本格的な場合はテーブル席がありチキン唐揚げ、手羽先など簡単な料理を提供することもある。帰りに料理代を支払う。庶民や若者の“外飲み”はこうした飲み方である。
  3. ホテルのバー、レストラン&バーで飲食する方法である。この場合は酒の原価にサービス料が上乗せされるので酒屋で買うより3~5割程度高くなる。客層は外国人観光客やインド人富裕層である。

インドの若者や庶民は“酔っぱらうために飲む”

 ホステルなどでインド人と一緒に酒を飲む場合は筆者が買ったボトルからラム酒などをふるまうことが多い。ラム酒でもウイスキーでもインド人は生で飲む。ボトルからグラスに半分くらい注いで一気飲みするのだ。つまりツーショットくらいの分量を1回で飲み干すのだ。かなり飲むテンポが速く余り会話をしない。つまりコミュニケーションのために飲むのではなく酔っぱらうために飲むのだ。

 酒屋は一般的に午前10時~11時に営業開始する。平日の昼前には酒屋の立ち飲みスペースは呑兵衛の男たちで混み始める。大半が独り飲みだ。数人の仲間でテーブルを囲んでいてもやはり会話は少なく笑い声もあまり聞こえない。日本の居酒屋とは異なり雑然とした男ばかりの殺風景で背徳的な雰囲気が漂う。

 このような場所では200~300mlサイズの紙パック入りラム酒やウイスキー(マイソールでは150ルピー)を買ってグラスに注いで飲んでいる庶民が多い。ボトルで買うほど身銭に余裕がないのだ。ビールはアルコール摂取量比較で割高なので安物の紙パック蒸留酒が人気なのだ。やはり呑んで酔っ払うことが目的なのだ。

真昼間のサリーを着た女性の独り飲み

インド最南端のカンニャークマリのコモリン岬のホテルの最上階のレストラン・バー。キングフィッシャーが760円なり。つまみにピーナッツ、胡瓜と人参のスライスがついてきた

 酒屋の従業員は全員が男性であり立ち飲みスペースにも女性客は一切いない。男だけの世界なのだ。マイソールの中心街の酒屋は立ち飲みカウンターがあるだけでつまみはビニール袋入りのピーナツだけだったが、昼間から20人ほどのむさくるしい男たちで込み合っていた。

 ふと見るとサリーを着た40歳くらいで痩せてやや疲れた雰囲気のインド女性が目に入った。酒屋の売場で買ったラム酒の小瓶とコップを持ってカウンターに来た。彼女はコップにラム酒を注いで無表情に一気飲みした。小瓶が空になるとゴミ箱に捨てて外に出た。そしてすぐに雑踏に紛れて見えなくなった。ほんの数分間の出来事だった。

 全く予期しない女性の登場であった。インドの酒場で女性客を見たのは後にも先にも彼女1人である。なぜ平日の昼間に周囲の男どもの野卑な好奇心にも関わらず独りで立ち飲みしたのだろうかミステリーである。或いは彼女はゲイ・ボーイだったのだろうか。

以上 次回に続く 

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