2025年3月15日(土)

田部康喜のTV読本

2025年3月14日

 NHKの原発事故に関する取材班はこれまで、燃料棒が溶けたデブリの取り出しと処理水について、執拗な取材を続けて数々の番組を制作してきた。そもそも事故はなぜ起きたのか。地震による要因と原子力発電所の装置の問題なのか。それらをめぐっては、原発のミニプラントを製作して、「実験検証取材」ともいうべき手法によって冷却水の流れが正常だったのか、原子炉から流れ出した放射物質はどのように放出されたのか、などについて仮説を立証してきた。

県外処分という「約束」

 『約束はどこへ 原発事故14年 さまよう除染土』は、除染で発生した土砂について現在は福島県大熊町・双葉町に「中間貯蔵施設」に集められている。除染地域は福島県内の43市町村に及んでいる。除染土の量は、1400万立方メートル(㎥)で東京ドーム11杯分に相当する。

 政府は、福島県内の中間貯蔵施設の建設にあたって、法律によって10年以内つまり2045年までに県外に移送して最終処分することを約束している。これが、番組のタイトルに入れ込まれている「約束」である。

 中間貯蔵施設の設置を受け入れた当時の知事・佐藤雄平さんは証言する。

 「菅(直人)総理がみえられて突然、中間貯蔵施設の県内の設置の話でした。私はまったく理解しがたく、総理に『もう、すぐに帰っていただきたい』と申し上げました」

 その後、佐藤さんは次のような考えから施設の受け入れを承諾した。除染土は各地に「庭先保管」といわれるように散らばっていた。

 「(除染土は)は、原発の周辺に集めざるを得ない。(除染土が各所にあれば)あそこはやっぱり放射能が危ない、という間接的な印象になる。一カ所に集中しなければならない。最終的に苦渋の決断でした」

 政府に対して、中間貯蔵施設を受け入れる代償として、「30年つまり45年まで」という法律を制定させたのだった。

 中間貯蔵施設は、大熊町につくられた。門馬好春さんは所有している田が施設の用地の一部に使われている。門馬さんは大熊町生まれで、大熊町で育ちである。

 「原発の爆発によって(自宅はその姿をとどめず)この辺りが玄関です」と。「なんとも表現できない。なんともいえない。いまでも被害者が妥協している。中間貯蔵施設をつくることも、はじめから我慢しているわけです。なぜ、(原発事故の)被害地域に貯蔵施設か」


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