上述の世論調査では、現政権維持のため与党候補の当選を期待が37%、政権交代のため野党候補の当選を期待が52%で、野党が圧倒的に優位だ。そして、個人毎にみると野党・共に民主党代表の李在明氏が34%、尹政権で雇用労働部長官を務めた金文洙氏が9%、与党・国民の力代表の韓東勲氏が5%と続く。
この情勢から、順当にいけば李在明大統領の誕生がほぼ確実だろう。国会は共に民主党が過半数を得ているので、2028年の総選挙までは進歩政権が安定した国政運営を行えることになる。
だが、民族主義的傾向が強く、北朝鮮に融和的な進歩政権と日本とは折り合いが悪い。
ざっと上げるだけでも、盧武鉉政権での歴史認識問題での対立、文在寅政権での元徴用工への賠償命令、慰安婦問題に関して日韓合意の破棄、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の一時的な破棄通告、日本海での海自哨戒機への射撃管制レーダー照射など、過去の軋轢はいとまがない。
そして、大統領が有力視される李在明氏は、かなり独特な個性の持ち主だ。
「尹錫悦は嫌だが、李在明も嫌だ」
李在明氏は1964年、首都圏の京畿道安養市に生まれた。小学校卒業後、工場に就職し、野球グローブ工場でプレス機に手を挟まれ、手首が砕ける重傷を負う。この怪我がもとで兵役には行っていない。
恵まれない環境に自分を見失うことなく、中学と高校の卒業検定試験に合格したが、17歳の時に2度自殺を図る。19歳で奨学金を得て大学に進み、大学院を経て司法試験に合格し、労働問題を取り扱う弁護士となり、市民団体も立ち上げた。
その後は、政界に進出し、2010年に首都圏の城南市長、18年に京畿道知事に就任し、22年の大統領選挙では尹氏と一騎討ちの結果、わずか0.73ポイント差で敗れた。いまは野党・共に民主党代表の国会議員だ。
氏の経歴からわかるとおり、軍人や検事、財閥出身の韓国旧来型のエリートではない。文在寅氏とは同じ弁護士・市民活動家出身だが、世間からは俗物視されており、「尹錫悦は嫌だが、李在明も嫌だ」という公言する進歩派も多い。
李在明氏は大統領に約束されたも同然だが、一つだけ懸案事項がある。それは司法リスクだ。22年の大統領選挙の過程で虚偽の発言をしたとして、公職選挙法違反で在宅起訴され、一審で懲役1年執行猶予2年の有罪判決が出されたが、今年3月26日、控訴審が無罪を言い渡した。
