2024年4月20日(土)

ReSET

2014年5月9日

 音楽がレコードやCDというパッケージを経ることなく、例えばアップルのiTunesなどを使って、聞きたい1曲だけを購入して聞くことができる時代になった。このサービスが始まった当初、日本の音楽業界や家電メーカーは、米国の一部テクノロジー企業が起こした、音楽業界の常識をわきまえない挑戦だと考えた。このとき、時代の変化を読み違えた結果は、今の日本に色濃く残っている。

 ここで起きたのは、聞きたい音楽を楽しみたいという、CDを買うことの先にある本質へのあくなき追求であった。音楽がCDからネット配信の時代に変わり、中間搾取をしていた音楽産業は大きな変化をせざるを得なかった。インターネットが音楽産業に害悪だという人もいるが、違うであろう。レコード会社のプロデュース機能任せだったアーティストが、音楽を聞き手に届けることに専念することができるようになった。それによって、コンサートを筆頭にファンとの音楽交流を再開発した。

 高等教育の世界にも似たような兆しがある。「○○大学」というパッケージに変化が起き始めている。「スタンフォード大学○○学部○○学科」の卒業というパッケージではなく、「○○なら○○先生の○○講座」。しかも、その講座を受講する学生のうち成績上位3%のみに関心があり、そうした学生をスカウトしたいというグローバル企業が現れ始めている。

 東京大学が推薦入試を始めるということで、その内容が注目された。男子校、女子校は各1人、共学校は男女各1人、校長が推薦することができるそうだ。「全国から1000校を推薦する予定だから、最大2000人の応募があるだろう」という東大事務局からのコメントがあった。多様な学生を呼び込もうという意図だろうが、世界の大学ではもっと大きな変化が起きている。

 例えば、米スタンフォード大のセバスチャン・スラン元教授は、自らのオンライン講座を作り、ネット公開した。すると16万人を超える登録があり、そのうちの2万人はスタンフォードの教室の学生と同様の修了試験に合格し、またその一部には、はるかに優秀で熱心な学生もいた。これに愕然としたスラン元教授は、オンライン教育ベンチャーに身を投じたという。

セバスチャン・スラン氏。グーグルで「グーグル・グラス」の開発リーダーも務める(The New York Times/アフロ)

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