大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』のなかで、田沼意次(渡辺謙)の嫡男・意知役を演じている若手人気俳優の宮沢氷魚に、実年齢を上回る90歳の大家・鈴役の加賀まりこが加わって、さとこ(桜井ユキ)と「薬膳」を介して展開するドラマは好調である。
NHKの番組見逃しサービス「NHK+」では、朝のテレビ小説と大河ドラマを除けば、本作は「正直不動産2」(山下智久主演、24年)を上回って、最高視聴数となっている。このため、本作の緊急再放送が4月19日午前1時36分から第1・2話、第3話も20日午前2時22分から予定されている。
桜井ユキの演技とそれを輝かせる俳優
さとこ役の桜井ユキがみせる、苦悩と喜びの細やかな演技が魅力である。宮沢氷魚はこうしたドラマのように、ヒロインの演技を受けてそれを輝かせる才能にあふれた俳優だと思う。
小松菜奈の代表作である『ムーンライト・シャドウ』(吉本ばなな原作、エドモンド・ヨウ監督、21年)においては、小松が愛した恋人役で交通事故死を遂げ、月影(ムーンライト・シャドウ)のもとで死者と出会えるという伝説のもとに物語は展開する。小松と再会したのではないか、と観客に思わせて、彼女の再生を助ける重要な人物役をこなしている。
加賀まりこについては、いうまでもなく日本を代表する女優のひとりである。『月曜日のユカ』(1964年、中平康監督)で、奔放な少女として周囲の男性たちを混乱の渦に巻き込む演技で注目された。「小悪魔」の愛称で呼ばれた。
本作品では、実年齢が81歳ながら90歳の大家を演じても、少女のような可憐さを失っていないのは驚きである。ちゃめっけたっぷりに、さとこ(桜井)に寄り添っていく。女優も「100年時代」なのだろう。
鈴(加賀)はさとこを自宅ですき焼きをするから、と誘いに来る。「黒毛和牛なのよ」と。
調理するのは、司だった。鈴はいう。「わたしはね、掃除が苦手だし、お手伝いさんが欲しいと思っていたの。長生きするといいこともあるのね」と。
フリーターだという司は、アパートのご近所の補修や買い物などを頼まれて重宝されている。「お返しだっていって、実家が農家の人からはお米をもらったり、トウモロコシをもらったりね。司の親切は労働なのね」と、鈴。
司と同居することになって、鈴は「毎日、新しいことがあって楽しいの。この黒毛和牛もスーパーの株主になったので、年に2回届くのよ。ネットで買い物もしたりしてね」
