ストレスによる脳の機能低下を防ぐには、できるだけ早くストレスの原因を取り除くことが必要です。ストレスを取り除けば、コルチゾールの過剰な分泌は止まります。その後、頭を使ってシナプスを伸ばしていけば、脳を元の状態に戻すことができます。
肥満もやせすぎも、脳にとっては悪習慣
脳力向上のために避けたい習慣の2つめは、「肥満」です。第2回目に、BMIが35くらいの肥満度の人の脳では、運動野と、前頭前野の創造力や決断力をつかさどる46野が小さい傾向があることをお話しました。
ただし、やせすぎも問題です。BMIが18以下になると、栄養が不足して、脳の働きが弱まります。また、免疫力も低下して、様々な感染症にかかりやすくなります。最近スペインでは、BMIが18以下のやせすぎのモデルを、ファッションショーに出さないことが決められたといいます。これは社会的な影響力を考えると、仕方ないことでしょう。やせすぎがオシャレという価値観が定着してしまうと、栄養失調で脳の働きも低下した若い女性が増えてしまいます。
体と脳の健康を考えると、一般の人はBMI22~23が理想の数値です。
一人暮らしより、共同生活のススメ
脳のためには、「一人暮らし」も避けたいものです。一人暮らしでは、どうしても他人とのコミュニケーションが不足してしまうため、脳を使わない状態が多くなります。脳を活性化させるには、一人暮らしよりは他人と共同生活をして、刺激のある生活をすることが大切です。
脳卒中になったあとに麻痺が残った人の場合、一人暮らしの人のほうが、家族と生活している人より回復が遅いという研究結果もあります。認知症になる確率も、一人暮らしでは高くなります。
他人とのコミュニケーションは、脳のあらゆる機能を活性化して、老化を防ぐ効果があります。一人暮らしをしていても、読書や勉強することで知的能力を高めることはできますが、脳全体の働きを考えると、それだけでは不十分です。また、テレビを見て楽しむことは、脳の刺激にはなりますが、子どもの場合「1日5時間以上、20歳ぐらいまで見続けると脳が受動的になり、積極的に動かなくなる」という研究結果が明らかになっています。大人が長時間見続けた場合の脳への影響は明らかになっていませんが、長時間テレビを見続けることは避けたほうが良いといえます。