施設の特徴は広い敷地と自然に恵まれていることだ。
「子どもたちは農園で作物を育てる過程で、共同して作業を行う喜びを知るとともに、成功や失敗の体験を積みながら協調性や社会性、生命の大切さを学んでいきます。また日々自然とふれあい季節の変化を体で実感することは、子どもたちの心身の健全な発育には欠かせません。通常の学校生活や部活動では経験できないことをここでは学ばせています」と前回の取材で鈴木は語っている。
卒業後の試練にどう立ち向かっていくか
入所する年齢や時期はそれぞれ異なるにしても、24時間体制で見守られながらの生活指導、学習指導によって卒業生たちは晴れの日を迎えたのである。
卒業生たちの言葉に「2年間ありがとうございました。これから仕事頑張ります」や「絶対にダンサーになってやる!」という将来への思いもあれば、「父ちゃん、俺は父ちゃんの息子で良かった」や「母ちゃん、今まで迷惑をかけてごめん」「お母さん、(家族の名前)これからもいっしょにがんばろうね」と離れて暮らす家族への感謝があった。子どもの口から親への思いが語られるということは成長の証しだと聞いたことがある。様々な背景を持って入所した子たちなので、その言葉には部外者には計り知れないほど大きく重いものがあるに違いない。
以前の取材で、全国の児童自立支援施設の卒業生で進学した約8割は高校を中退し、これが最大の問題点となっていると聞いた。高校1年生の夏場が最初の壁だという。卒業するこの子たちにも遠からずその試練がやってくるはずだ。
学園を卒業すれば元の環境や元の仲間たちが待っている。そこへ変わった自分がどう戻っていくか。刹那的に「今」を生きるか、それとも将来に思いを馳せて自分を律することができるか、その狭間で葛藤し続けることだろう。