中国共産党が一番恐れている点は、①蓄積している習近平独裁体制に対する不満が表面化し、抗議活動が国内で「横」に広がり、社会不安を惹起し、政治が不安定化すること ②自由や民主主義といった西欧的価値観が国内に広がり、国民がそれを求めて声をあげることである。
対外的に、習近平独裁政権は国際秩序を中国にとって都合の良いものとすることに努めている。その一環として、「台湾併合」、「南シナ海・東シナ海における実効支配確立」などを目指し、あらゆる手段を使って戦ういわゆる「超限戦」を実践している。実際、昨年以降、台湾およびフィリピンにおいて、頻繁な軍事演習やサイバー攻撃、海底ケーブル切断の可能性、船舶の放水・衝突等に加え、スパイ容疑で逮捕される中国人または中国によって買収された台湾人などが増えている。
トランプ関税で起こる日本への「人の流入」
日本においても同様の問題が既に起こっていると思われるが、今後トランプ関税措置の進展に伴い、米中対立が激化すると、貿易投資面だけでなく、「人の動き」にも注目する必要がある。
現在、日本に在留する中国人は100万人近い。彼らは日本において習近平や共産党を批判すれば、「密告の対象」となり、本人だけでなく中国に住む家族にも累が及ぶことを懸念し、言動に用心している。中国への里帰りを行わない人もいる。
トランプ関税による中国人の動きへの影響は予想しがたい面があるものの、①中国で大学を出ても就職がないことから、日本への留学が一層増加する、②雇用情勢が悪化し、日本に仕事を求める人材が増える可能性、特に資格審査が緩い「技能・人文知識・国際業務」(在留資格)を偽造書類で入手する可能性がある、 ③すでに起こりつつあるが、子供の教育のために、裕福な中国人一家が「経営管理」資格を入手して入国してくる、などのことが考えられる。言うまでもなく、彼らは中国治安当局の監視のターゲットであり、また、「国家情報法」に基づきスパイ活動を強要される可能性がある。
このような状況を勘案すると、日本は、①「スパイ防止法」②日本在住外国人の日本法令順守義務等を明記した「外国人材共生基本法」(仮称)の早期制定に加え、中国共産党による人を使った措置への対応策(例えば、国別受入れ人数枠の設定等)も必要であろう。
