ウィリー・ウーラップ・ラム氏(ジェームズタウン財団シニアフェロー)は、今回の制裁はルビオ氏の対中姿勢と一致しているが、トランプ大統領自身はこの地域の人権支援にあまり重点を置いていないと指摘する。トランプ政権は、『ボイス・オブ・アメリカ』や『ラジオ・フリー・アジア』など、中国やその他の国々の反体制派コミュニティのために長年、声を上げてきた団体への資金を大幅に削減した。
「トランプ自身は、チベットや新疆ウイグル自治区、香港で起きていることにそれほど関心を持っていない。人権問題は、長年にわたる米中間の体制間競争における一つのカードにしか過ぎない」とラム氏は言う。
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中国共産党が恐れていること
トランプ大統領は、人権や民主主義への関心を有していないのではないかと言われているが、大統領の関心の有無はともかく、ルビオ国務長官の下、米国務省が中国の人権侵害問題に引き続き大きな関心を有し、今般、新政権発足後「初の制裁」を決定したことは、自由と人権、民主主義を守る観点から大きな意義がある。
制裁を科した理由は、中国が、報奨金を出してまで、海外に住む民主運動家に関する情報を収集し、民主運動家本人のみならず、中国および香港に残留している家族に対しても、様々な威嚇や脅迫を行っているためである。
米欧州連合(EU)日といった西側諸国が、チベットや新疆ウイグル問題を含め、中国共産党による人権侵害行為に対して、批判の声をあげ続けることが、「世界の将来」にとって極めて重要である。トランプ政権が厳しい立場を維持することが強く期待される。
習近平総書記は、「中国の夢」というスローガンを標榜し、既存の国際秩序の書き換えを目指して内外の影響力増強に努めてきたが、コロナ後の土地バブル崩壊、若者の失業増加、公務員給与の遅配・未払い、国家主席の任期制限をなくしたこと等に起因して、習近平に対する「中国国民の不満」は広く深く蓄積している。
そして、情報通信技術や脅迫等を駆使して外国からの情報を遮断することに加え、「国民監視」をこれまで以上に巧妙かつ厳格に実施して、「不満」を抑え込んでいる。