バード大学教授でウォールストリート・ジャーナル紙コラムニストのウォルター・ラッセル・ミードが、4月7日付け同紙掲載の論説‘Why Trump Wants Tariffs’で、トランプ大統領が関税を好むのは国内外で自らのパワーを強める手段と見ているからだ、と指摘している。概要は次の通り。

トランプ関税を通じて我々が目にしているのは典型的なトランプらしい姿である。トランプは自分に対し、また、自分のコアとなる本能と考えに信を置いている。トランプは自分の意見に反対するアナリストや政策論者は愚かで弱い存在と思っている。
抵抗を受けたとき、妥協したり考え直したりすることは、トランプの本能からは出てこない。むしろ掛け金をつり上げ、ドラマを煽り、大胆な手段と厳しい威嚇によって相手をおびえさせようとするのがトランプである。こうした方法はこれまでも効を奏してきており、トランプは今回も同様と考えている。
トランプが目指しているのは、自身の個人的なパワーを最大化することにあり、貿易エコノミストとの論争に勝利することでも、株価を上昇させることでもなさそうである。国内的には、米国の関税政策を全面的にコントロールすることで得られる政治力によって経済界を従わせることができると考えている。経済的な波紋も生まれるだろうが、トランプ支持者との繋がりによって乗り切ることができると信じている。
国際的には、トランプは「衝撃と畏怖」を生み出す関税戦術によって自身と米国のパワーと威信を強めることができると考えている。米国の経済力をむき出しの姿で見せることにより、トランプは、同盟国であるか敵国であるかを問わず、各国に対して自分の力を認めさせ、その優先度に従わせようとしている。
トランプは、多くの国にとって米国との貿易がその国の繁栄にとって不可欠であることを理解している。トランプは、また、世界のかなりの地域の安全保障が米国の保証によって下支えされていることを知っている。
世界に対して、貿易ルールも安全の保証も自分の考え次第であることを伝えることで、トランプはパワーを自らの手に集めている。トランプの関税表が無慈悲で一方的であることは、他の国のトランプへの依存とともに、トランプのパワーを制約するものが米国内にないことをも示している。
トランプは手にすることができるだけのパワーを自分に集めようとしている。その一方で、トランプ政権が直面する国際的危機は日に日に大きく、深刻なものとなっている。