2025年5月23日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年5月9日

 2025年4月3日付Economist誌は「米国は中国を偉大にしかねない」との社説を掲げ、トランプ関税は、中国に経済改革の機会を与え、地政学的立場を強化し中国を偉大にしかねないと論じている。

(claffra/gettyimages)

 トランプ関税は、中国に地政学的状況の再編の機会を与える。習は指導者になって以降、常に今日の混沌とした世界に備えるため経済的技術的自給自足の実現を主張し、制裁や輸出規制等の米国の圧力への脆弱性を下げてきた。

 今や銀行を通さない国際的支払いのほとんどは元(中国の貨幣)だ。競争と技術重視で中国製造業は電気自動車から無人機まで西側に勝っている。

 中国から見るとトランプ関税は自損行為だ。中国は、米国の半導体禁輸を回避し中国が革新的技術開発を行い得る兆しだ。共産党が支持するAI技術は中国国内で迅速な拡散が可能で生産性を向上させる。

 不動産バブル崩壊から4年経ち成長への悪影響は減少し、上海等では不動産価格は上昇した。共産党は漸く消費刺激策を始め、地方政府は多額な新規債権と特別債権により債務借り換えが可能になった。

 中国は相手国の製造業投資で貿易関係を再構築し得る。これらの経済的機会は地政学的機会と表裏一体だ。


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