2025年5月13日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年5月9日

 米国の対中政策は不明確で、タカ派は中国封じ込め強化を主張するが、トランプは習に憧れ取引への感触を探るためデーンズ上院議員を派遣した。第一次政権時にトランプは中国と貿易合意を結んだ。今度はTikTokで交渉しようとしている。

 中国はMAGAがロシアの中国からの引離しを目論むのは愚かで、保護主義、同盟国虐め、人権無関心から、自由主義世界の旗手は今や気まぐれで危険だと見ている。中国にとって影響力拡大のチャンスだ。中国が温暖化ガス削減に取り組めば気候変動でも指導力を示せる。

 トランプの北大西洋条約機構(NATO)とウクライナへの侮蔑は米国のアジア同盟国へのコミットメントと台湾防衛関与への信頼性を下げた。もし米国が先進半導体自国製造を高めれば、台湾防衛意欲は一層減少する。これは習へのご褒美だ。

 トランプは中国との取引に失敗すれば為替を攻撃し追加制裁を課すだろう。中国が輸出垂れ流しを続ける可能性もある。中国がこの機会を活かすかは習近平次第だが、機会を作り出したのはトランプだ。

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欧州の楽観的な中国経済見通し

 Economist誌の議論の大枠は、正しい。世界的相互関税の賦課の基調は変わらない。これはトランプ政権下の米国が孤立していく動きの最新のエピソードであり、中国が偉大にならなくても、米国が落ちていくので(自損行為)、相対的にみんな中国に頼らざるを得なくなる。

 実はEconomist誌の表紙の写真は、MAGAの帽子で、ほとんど確実に中国製だろう。現在、約2000円~5000円だが、トランプ関税により、これが 4000円から1万円程度になるということだ。

 次に、中国経済に対するEconomist誌の見方は、いつもと若干異なり前向きだ。世界経済には喜ぶべきことだろうが、この背景には、米国が倒れる中で中国に頑張ってもらわないと困るという欧州の意図的楽観論があるのではないか。


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