2025年5月13日(火)

Wedge REPORT

2025年5月5日

 こどもの日を迎えたが、日本の子どもは減るばかりだ。国や地方自治体は様々な少子化対策を講じているが、その効果に疑問符が付くものも散見される。人口減少社会を前提とした社会を構築すべきといった意見も出ている。

 日本の少子高齢化は喫緊の課題で、6月の都議選や夏の参院選でも争点の一つになり得る。立ち止まって考えられる記事5本を紹介する。

(puhimec/gettyimages)

<目次>

〈注目〉「子ども・子育て支援金制度」は少子化対策の特効薬になるのか?制度の持つ二面性にも目を向けよ(2024年8月30日)

【誤解だらけの少子化問題】歯止めがかからない本当の理由は?データから見るその実態(2024年6月8日)

「高校無償化」になっても教育費が家計を圧迫する理由、そもそも私立と公立は何が違うのか?(2025年3月11日)

【出生数過去最低の衝撃】「人口8000万人社会」実現に必要な合計特殊出生率は?「人口ビジョン2100」を考える(2024年3月8日)

【合計特殊出生率が2.95!】岡山県奈義町の出生率はなぜこんなに高いのか?奇跡の町とメディアは礼賛するが、それは必然だった(2024年6月7日)

〈注目〉「子ども・子育て支援金制度」は少子化対策の特効薬になるのか?制度の持つ二面性にも目を向けよ

政府の少子化対策は子を持つ家庭のためになれるのか(maroke/gettyimages)

 次元の異なる少子化対策を推進するために創設された「子ども・子育て支援金制度」は、国民負担やサービス内容の議論が先行し、制度の抱える特徴が十分に理解されていない。その特徴は、安定財源の確保と不合理な制度設計という二つの側面から説明することができる。政治家や政策担当者にとって”打ち出の小槌”になりうる支援金制度の概要を解説する。

 2024年6月、子ども・子育て支援法などの改正法が、参議院本会議で賛成多数で可決・成立した。

 改正法では、児童手当の所得制限の撤廃や18歳までの対象拡大、「こども誰でも通園制度」の導入、育児休業の拡充などに加え、本稿で取り上げる「子ども・子育て支援金制度(以下、支援金制度)」が創設された。支援金制度は、公的医療保険に上乗せして国民や企業から広く拠出を求め、少子化対策の財源を確保するものである。

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【誤解だらけの少子化問題】歯止めがかからない本当の理由は?データから見るその実態

(イラストレーション・藤田 翔)

 さまざまな要因が絡まって起きている少子化。だが、巷でささやかれている原因の中には古い認識や誤った認識もある。まずはデータから少子化を正しく捉えよう。

Q1 2022年の合計特殊出生率は1.26となり、05年に並び、過去最低となりました。また、22年に生まれた赤ちゃんは77万人となり統計開始以来、初めて80万人を割り込みました。なぜ日本では少子化が急速に進行したのでしょうか。

A1 世間では「若い人の価値観の変化や娯楽の多様化が少子化の原因」と考える人も多いかもしれませんが、日本の少子化の最大の要因は「未婚化」にあります。国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、第二次ベビーブーム以降、結婚した夫婦が持つ子どもの数は減少傾向にはありますが、1970年代から2.0人前後でほぼ横ばいです。その一方で、未婚者の数は過去40年弱で大幅に増加しており、1980年から2020年で生涯未婚率(50歳時点での未婚割合)は女性で4.45%から17.81%に、男性ではなんと、2.6%から28.25%にまで増えています。もはや男性は4人に1人以上が〝生涯未婚〟という時代です。夫婦が持つ子どもの数が変わらないのに少子化が止まらない理由は、この「未婚化」の進行にあるといえます。

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「高校無償化」になっても教育費が家計を圧迫する理由、そもそも私立と公立は何が違うのか?

(Milatas/gettyimages)

 教育無償化について、自民・公明両党と日本維新の会が党首会談で合意した。この合意では、高校無償化について2026年度から収入要件を撤廃し、私立加算額を全国平均授業料の45万7000円に引き上げるとされている。先行措置として25年度から所得制限を撤廃し、全世帯を対象に支援金11万8800円を支給するという。(「自民・公明・維新が高校無償化等で合意 来年度予算成立へ」

 これにより公立高校は所得制限無く授業料が実質的な無償化に、私立高校についても保護者の金銭的負担は大きく下がることになる。公立と私立の学費差が大幅に縮まることで、生徒は家庭の経済事情によらず高校を選択しやすくなるという。(もっともこれは授業料の話である。私立学校では施設費やその他費用も多額であり学費が全て無償になるというわけではない。)

 一方で受験競争の若年化や公立離れが懸念されている。実際に京都府や兵庫県では少子化の影響もあって私立中学の受験者数が昨年に比べ減少しているが、すでに高校無償化に取り組んできた大阪府では逆に7.1%も増えた。同様に昨年から私立高校に通う生徒に約48万円あまりを支給していた東京都では、都立高校の平均倍率が1.3倍から1.20倍に急減したという。(高校の授業料“無償化”も…専門家「教育負担は減らない可能性」【サンデーモーニング】

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【出生数過去最低の衝撃】「人口8000万人社会」実現に必要な合計特殊出生率は?「人口ビジョン2100」を考える

(okugawa/gettyimages)

 昨年4月に公表された国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口(長期参考推計の中位推計)によれば、2100年に日本人口は6278万人まで縮小し、その後も減少が続く。2120年には5000万人を割り込むとしている。6000万人といえば大正末期から昭和初期、5000万人なら明治末期の水準である。

 2月末、厚生労働省が発表した2023年の人口動態統計速報によると、出生数が近代統計史上最少の75.8万人となった。想定よりも減少のペースが速く、一段と人口減少が進むことが懸念される。

 人口の持続的な縮小は労働人口や消費人口を減らし、経済規模を縮小させる。現在の生産性が維持されたとしても、国内総生産(GDP)は半減するだろう。

 国際通貨基金(IMF)の世界のGDPランキングで、日本はこれまで米国、中国に次いで第3位の位置を占めていたが、最新(2024年)の統計ではドイツに抜かれて第4位になったことが話題になったばかりである。単純に言えば、人口が半減する2100年にはGDPも半減して、現在のカナダに次ぐ水準(第11位)まで後退するということだ。

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【合計特殊出生率が2.95!】岡山県奈義町の出生率はなぜこんなに高いのか?奇跡の町とメディアは礼賛するが、それは必然だった

(イラストレーション・藤田 翔)

 岡山県勝田郡奈義町は、鳥取県との県境にそびえる那岐山のふもと、人口約5700人の小さな町である。

 だが、この町の合計特殊出生率は、2.95(2019年)。メディアからは〝奇跡の町〟とも称され、2023年2月には岸田文雄首相も視察に訪れた。

 なぜ、これほど高い出生率が実現できるのか。小誌取材班はその理由を確かめに6月下旬、奈義町を訪れた。

 そこには、20年以上かけて、行政と町民が一体となり、試行錯誤や創意工夫を重ねながら、独自の子育て支援を広げていった歴史があり、町全体が自然と「子どもが欲しい」と思える空気感と安心感に包まれていた──。

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