日本の原子力外交に求められるもの
日本は、1970~80年代に必死に対米交渉をした結果、非核兵器国ながら再処理、濃縮の権利を獲得した、いわば既得権者、特権階級である。それだけに、韓国やイラン、北朝鮮だけでなく、多くの国から羨ましがられ、あるいは問題視されている。だから、自らの既得権に胡坐をかいて、安閑としていると、どこで足を掬われるかわからない。
これまで長い間日本は、米欧の先進国との原子力関係では、原子力資材・技術の輸入国として、もっぱら「規制される側」の立場で対応してきたが、今後は新興国との関係において、供給国(輸出国)として「規制する側」の立場で判断しなければならなくなっているわけだ。まさに発想の転換が必要になっているのである。
そうした2つの立場の違いをよく弁えて、適切かつ能動的に対応しなければならないが、そのためには、再処理・濃縮問題や原子力協定問題を単なる技術問題やエネルギー問題としてではなく、より広い外交的、戦略的な観点からしっかり考える姿勢が平素から必要なのである。これを筆者は、外務省の初代原子力課長としての長年の経験から「原子力外交」と呼んでいるのであるが、国会や論壇においても、是非そのような広い視野と高い視点で徹底的に議論してもらいたいと強く願っている。
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