「断崖絶壁で背中を押された」米菓業界
5月20日、都内のホテルで開催された全国米菓工業組合の総会で、冒頭あいさつに立った星野一郎理事長(越後製菓社長)が自社社員のコメ農家からの情報として「大手卸が25年産米を青田買いしている」という生々しい事例を紹介した。続けてコメの異常高騰がもたらす影響として米菓業界の主原料である加工用米やもち米が入手できなくなる恐れがあるとし、米菓業界は「断崖絶壁で背中を押されている状態」と強い危機感を露わにした。
米菓は、もち米を原料とした「あられ」とうるち米を原料とした「せんべい」に分けられるが、両方とも深刻な原料米問題に直面している。
24年度の生産量はあられが9万トン(t)で、原料米は国産とタイ産のもち米を使用している。国産もち米の供給ルートは、一般もち米と加工用もち米の2つがある。
一般もち米はうるち米の価格が急騰するのに伴って急激に値上がり1俵(約60キロ)4万円を超えるまでになっている。加工用もち米は国からの助成金が受けられることもあって24年産米までは契約栽培で比較的安定した量を確保できたが、25年産ではもち米からうるち米へ切り替える生産者が増えると見込まれ、田植えが終わっても契約栽培の目途が立っていない。必要量の確保ができていないという異常な状態になっている。
産地側からすると、加工用もち米は国からの10アール(1000平方メートル)当たり2万円の助成金が支給されるものの、生産者の手取りは1俵1万2000円程度とうるち米の半分であり、もち米を作るメリットがない。このため米菓業界に契約栽培価格の大幅な値上げを求めたが、あまりにも上げ幅が大きかったため一部の大手メーカー以外は契約に応じられないままになっている。
さらにはタイ産もち米の売却価格も値上げされており、原料米コストは上がる一方だ。このため全国米菓工業組合は、国産もち米に品質が近い中国産やカリフォルニア産のもち米をMA枠で輸入するように国に求めている。
せんべいの主な原料は主食用よりも粒の小さい特定米穀とMA枠で輸入されるアメリカ産米。特定米穀はこれまで1㎏120円程度で入手できたが、コメ価格高騰で一気に2倍以上になり、もはや米菓業界が使えるような価格ではなくなった。
このため全国米菓工業組合は他のコメ加工食品業界とともに再三にわたり農水省に原料米対策を講じるように要請してきたが、ゼロ回答が続いている。唯一実現したのは備蓄米の売却だが、これも売却対象米穀は20年産米で、数量が1万tに限定されうえ、売却最低価格は1万3500円という高値であった。
