2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年6月20日

 イスラエルのネタニヤフ首相はイランがウランを濃縮することができないようにするというトランプ政権の交渉目標を支持する発言を行った。イスラエルの関係者は、イランが核爆弾を保有することを阻止するために軍事行動を取る可能性があると警告していた。

 トランプ大統領は外交交渉の方を選好すると述べたが、もしも交渉が失敗に終われば、攻撃を支持するかもしれない。ホワイトハウスのレヴィット報道官は、大統領は協議が「正しい方向に向かって進んでいる」と考えていると述べた。

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トランプのアプローチが変わった理由

 第二期トランプ政権は、4月以来、イランとの間で、イランの核活動に対応するための協議を重ねてきている。第二期トランプ政権はイランの核問題について、第一期政権の時のように制裁と圧力によって譲歩を迫る「最大限の圧力」政策を取るかと思われたが、案に相違して外交交渉によってイランの核活動を抑える対話路線をとっている。

 第一期政権の際には、オバマ政権が15年に成立させたイラン核合意(「包括的共同作業計画:JCPOA)から18年に離脱し、「最大限の圧力」政策を取ったが、今回、新たな核合意を目指す姿勢である。

 イランの核開発の現状を見ると、第一期トランプ政権によるJCPOA離脱を受けて、ウラン濃縮活動を拡大してきている。6月の国際原子力機関(IAEA)理事会のために準備された同機関の報告書によると、60%レベルまで濃縮された高濃縮ウランを409キロ保有している由である。

 これは核兵器9〜10個分に相当するとみられる。イスラエルはイランの核施設に軍事攻撃を仕掛けることを米側に打診してきたが、トランプ政権はこれに同意を与えていないと伝えられている。

 なぜ、第二期トランプ政権が第一期政権とは異なるアプローチを取っているかについては、いくつもの背景・理由が考えられる。トランプはサウジアラビアとの関係を重視しており、サウジはイランと23年に国交を正常化しており、イランとの対立激化よりは地域の安定を望んでいること。中東地域が18年よりも軍事紛争が激化した状況となっていること。米国として、第一期トランプ政権時にもまして対外的な紛争に関与することに慎重になっていること、などを指摘することができるだろう。

 米国とイランとの交渉がまとまるかは予断を許さない。解説記事が指摘する通り、イランがウラン濃縮を継続することを米国が認めるかが最大の論点である。

 トランプ政権としては、ウラン濃縮を一切止めさせたいとの立場である。一方、イランとしては、ウラン濃縮を「制限」することは条件次第で受け入れる考えはあるものの、ウラン濃縮を「放棄」することは考えていない。


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