2025年12月5日(金)

21世紀の安全保障論

2025年7月7日

核開発を止めるために何ができるのか

 イスラエルがイランを空爆した6月13日、石破首相は「軍事的手段が用いられたことは到底容認できない。日本国として強く非難する」と表明する一方、22日に米国がイランの核施設を攻撃した際には、「核兵器保有を阻止するという決意を示した。(国際)法的評価は現時点では困難だ」と述べるにとどまっている。

 イスラエルを批判し、米国への配慮を示したことについて、ダブルスタンダード(二重基準)との批判もある。だが、ロシアのウクライナ侵略以降、国連安全保障理事会が機能不全に陥っている中で、NATO首脳会議こそ、核武装化した北朝鮮という脅威と対峙せざるを得なくなった日本の立場を説明し、核開発を阻止する手立てについて議論する格好の場となったのではないか。

 米軍によるイランの核施設攻撃を巡って、秋葉剛男・内閣特別顧問は都内で開かれたフォーラムで「核開発を止めることが国際法違反かといえば、解釈の余地があっていい」と述べている。正鵠を得た発言で、米軍は今回、地下貫通型の大型爆弾「バンカーバスター」を使用し、イランの核施設をピンポイント攻撃している。だが、1993年から94年にかけて深刻化した北朝鮮の核危機で、もしも米軍が同じ爆弾を持っていて、それを使うことができていれば、と思った人は少なくないのではないだろうか。

 しかし当時、米国は北朝鮮との全面戦争まで想定したものの、予測される被害の大きさから北朝鮮との融和を図った結果、どうなったのか――。北朝鮮はその後、核兵器とその運搬手段である弾道ミサイルの開発、配備を進め、日本は未来永劫、北朝鮮の核兵器に苦しみ続けなければならなくなってしまった。

 国連憲章を字面通り読めば、イスラエルと米国のイラン攻撃は紛れもなく憲章違反だろう。だが、最大脅威である核兵器の拡散を防ぐために、いま何をしなければならないのか。首脳会議への参加見送りは、日本が背負い続ける核の脅威の重さを話し、イランにとどまらず核拡散防止を議論する機会を逸した意味でも失望を禁じ得ない。

中国の無法ぶり示す好機を喪失

 さらに自衛隊幹部を愕然とさせたのは、中東問題が緊迫化する間隙を狙ったように、中国軍が太平洋での活動を活発化させている事実を説明し、日本とNATO諸国が中国に対する脅威認識を一にする機会を失ったことだ。

 5月に中国海警船の搭載ヘリコプターが沖縄・尖閣諸島の領空を侵犯したのに続き、6月には中国海軍は「遼寧」と「山東」という2隻の空母を太平洋に展開させた。このうち「遼寧」は、初めて小笠原諸島とグアム島などを結ぶ「第2列島線」を越え、日本最東端の南鳥島の周辺海域にまで進出、500回を超す艦載機の発着艦を繰り返した。

 「太平洋を米中で2分割して管理するという中国の戦略の一端を示した格好で、太平洋における米海軍の行動を阻止する意図は明らか」と自衛隊幹部は指摘する。


新着記事

»もっと見る