当時のG.W.ブッシュ大統領はただちに報復作戦を国防総省に命じ、最初の措置として、「アルカイダ」が拠点を置くアフガニスタンで軍事作戦に乗り出した。同時に、イラクに対しても、アルカイダを支援する「悪の枢軸」として非難するとともに、03年3月、「大量破壊兵器保有」を理由に、同盟諸国連合軍による対イラク・テロ戦争に踏み切った。
戦争開始に当たり、国連査察団がイラクに入り、調査に乗り出したが、「大量破壊兵器」施設はどこにも見つからなかった。
しかし、ブッシュ大統領は国連の査察結果を受け入れず、あくまで「大量破壊兵器の実在」を主張する米側情報機関の情報を根拠として軍事作戦を強行する結果となった。
結局、イラク戦争においても、戦争開始を強く求めたブッシュ大統領の下で、DIAを中心とした意図的な情報操作が行われていたことが後に明るみに出るに至った。
同じDIAが今回のイラン爆撃に関しては、大統領の意に反し、その“戦果”を控えめに評価していたのは皮肉というほかない。
米国は危機に直面しかねない
情報機関によるインテリジェンスの失敗の典型例として、上記二つの戦争は記憶されるべきだ。
この点に関連して、「Foreign Affairs」寄稿論文は、①トランプ氏はもともとインテリジェンスの価値を評価しておらず、歴代大統領が毎朝受けることになっている情勢ブリーフィングも週1回程度に減らしている、②トランプ氏は世界情勢分析について自らの『直感』と符合する場合にのみ受け入れる傾向がある、③自分の意に沿わない機密情報を軽視、無視する傾向があるため、各情報法機関のベテラン・スタッフたちが職を辞し、民間調査会社に転職するケースが増えつつある――などの点を指摘。結論として「トランプ政権下では、かつてコロナ感染拡大という国家的危機に見舞われた時のように、客観的なまっとうなインテリジェンスが機能せず、米国が突然予期せぬ国際危機や深刻な事態に直面することにもなりかねない」と警告している。
