また奈良の興福寺の中金堂(本堂)は、2018年に301年ぶりの再建が成されたが、そこではアフリカの原生林から伐り出された大木が使われた。それも違法伐採が疑われた木だ。世界的に森林破壊が問題になっている中、このような木を使用することには異議が出た。
ちなみに復元された建造物は文化財ではない。首里城の場合も、復元された正殿は世界遺産に含まない。あくまで史跡の上に建つ復元見本なのである。
そのために希少な大木を伐ることが許されるのか。無垢の大木にこだわらず、集成材などを使えなかったのかと問われる。文化のためなら自然を破壊してもよい、とはならないのだ。
復元の目的は?
平城宮跡内には近鉄電車の線路が伸びている。大正時代に平城宮跡とわからずに路線が建設されたのだが、おかげで朱雀門の前を電車が走る状態になっている。そこで線路を移設し地下にもぐらせる計画が進んでいたが、2年前に知事が交代すると撤回された。多額の予算が必要なうえに、遺跡の中を電車が走る景色も馴染んでいるとされたのだ。
ここでも歴史的景観を取り戻す事業と、現代の社会事情がぶつかる。復元による歴史研究や伝統技術などの継承は、文化的価値が高いだけでなく、観光など経済効果も大きい。しかし法律や安全性は無視できないし、住民感情や環境への配慮も重要だろう。そして財政的な問題も発生する。その中で復元の可否が問われるわけだ。
必要なのは、復元する目的とその効果を厳密に見極めることだろう。観光振興をもっとも大きな目的とするなら、高齢者向きにエレベーターを設置することも必要になるかもしれない。しかし歴史的景観の再現を重視するなら、現代的な施設や設備は、可能な限り抑え見えないようにしなくては台無しになる。
果たして首里城は、どちらを向いているのか。来年の完成時には、また訪れたい。
