MAGAの声と世論調査
中西部インディアナ州インディアナポリス在住で、MAGA支持者の1人であるB氏に、エプスタイン事件について質問をすると、彼は次のように回答した。
「MAGAたちは、ボンディの対応に非常に不満足です。彼女は、エプスタインの顧客リストが彼女の机の上にあると言いましたが、後で話を変えました。ボンディに相当な圧力がかかっていますが、そうあるべきです。エプスタインの顧客リストには、世界中の非常に有名な人物や、権力のある人物の名前が含まれているに違いありません。例えば、政府の関係者、宗教指導者、王族や映画俳優などです」
Bは、エプスタインの顧客リストに「エリート層」の名前が載っていると固く信じている。
上記のように、エプスタインの顧客リストに関して、「MAGA対ボンディ」の対立構図が明白になっている。ただ、Bはボンディを強く批判したが、トランプを決して非難しなかった。また、筆者がエプスタインの顧客リストにトランプの名前が入っていると思うかと尋ねたが、彼は回答を避けた。彼の批判の的はあくまでもボンディであり、トランプではない。
では、米世論はエプスタイン事件をどのように捉えているのだろうか。英誌エコノミストと調査会社ユーガブの全国共同世論調査(7月11~14日実施)によれば、「政府はエプスタインに関する全ての捜査文書を公開すべきか」という質問に対して、79%が「はい」、5%が「いいえ」、17%が「分からない」と回答した(図表1)。米国民の約8割が、捜査文書の公開を望んでいる。
2024年米大統領選挙でトランプに投票した有権者に限ってみると、83%が「はい」と答え、全体を4ポイント上回った。仮に、彼ら全員をMAGAとするならば、8割以上がエプスタインリストに関する捜査文書の公開に賛意を示したことになる。
次に、「政府はエプスタイン事件に関する証拠を隠しているか」という質問に対しては、全体で67%が「はい」、8%が「いいえ」、25%が「分からない」と答えた(図表2)。
24年米大統領選挙でトランプに投票した有権者に限ってみると、59%が「はい」、12%が「いいえ」、29%が「分からない」と回答した。MAGAにおいては、全体よりも8ポイント低かった。
同じ質問に対して民主党支持者では82%、無党派層では69%が、トランプ政権が隠蔽していると回答しており、これらが全体の数字を引き上げている。この調査では民主党支持者および無党派層は、エプスタインの顧客リストが存在し、それが隠されているとMAGAよりも信じていることが明らかになった。
今年2月、ボンディは米FOXニュースのインタビューの中で、「顧客リストが自分の机の上にある」と述べたが、米司法省は7月、顧客リストは存在しないし、追加の捜査文書は公表しないと発表し、この事件の幕引きを図った。


