2025年12月5日(金)

終わらなかった戦争・後編サハリン

2025年8月16日

「なぜロシア出身?」
次の世代でも交流を

須田武浩さん(35歳) 1996年に永住帰国

 「なんでロシア出身なの?」。私がサハリン出身だと話すと、世代問わず何度もこう問われます。
 南樺太にいた私の祖母は、タイミング悪く引き揚げ船に乗ることができず、残留を余儀なくされました。祖母は「日本に帰りたい」とずっと思っていたそうで、帰国した時は嬉しそうだったと聞いています。

 約30年前に両親、兄、祖母とともに永住帰国をしました。私は7歳でした。日本に来てびっくりしたことは、エレベーターやエスカレーターがあること。自動ドアを見た時も驚きました。

 日本に来たばかりの頃は日本語を理解できませんでしたが、周囲の助けもあり、徐々に覚えていきました。高校、大学では、幼少期に親しんだロシア語を専攻しました。今は私の娘もロシア語に興味を持ち、一緒に勉強しています。

 私は心から「サハリンに住んで良かった」と思っています。多くの日本人とは違う言語、文化のもとで過ごし、客観的に日本を見ることができるようになったからです。

 早くサハリンに住む親戚に会いたいし、お墓参りもしたい。最近、サハリンのいとこに子どもが生まれたのですが、輸出規制の影響から、おもちゃすら自由に送ることができません。せめて個人間は自由に交流させてほしい、将来的には元通りに自由に往来できるようになってほしい。

 北海道でもサハリンを知らない人は多く、近い将来、家族に関係者がいても、サハリンを知らない人が増えていくかもしれません。サハリンに関わる人同士でのつながりはなくしたくない。いつか、若い世代同士で交流イベントを開きたいですね。

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Wedge 2025年8月号より
終わらなかった戦争 サハリン、日ソ戦争が 戦後の日本に残したこと
終わらなかった戦争 サハリン、日ソ戦争が 戦後の日本に残したこと

1945年8月15日。終戦記念日として知られるこの日に、終わらなかった戦争があった――。樺太(現ロシア・サハリン)での地上戦、日ソ戦争である。
「沖縄が〝唯一〟の地上戦」と言われるが、北海道のさらに北、日本領「南樺太」でも地上戦があったことは広く知られていない。
8月9日以降、ソ連軍は、日ソ中立条約を一方的に破棄し、侵攻。8月15日を経てもなお、戦闘は終わらなかった。この間、多くの人が亡くなり、沖縄戦同様、死の逃避行や集団自決もあった。長らくサハリンに残留を余儀なくされ、ソ連崩壊後にようやく日本に帰ることができた人もいた。
終わらなかった戦争は戦後の日本に何を残したのか。また、現代においても、様々な困難が立ちはだかる日本とロシアの関係はどうなっていくのか。
未来を切り拓くために過去の悲劇を学ぶとともに、歴史の忘却に抗いたい。


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