2025年12月5日(金)

Wedge REPORT

2025年8月17日

 現代の親が子どもに身につけてほしい力として、コミュニケーション能力や主体性など、いわゆる「非認知能力」があげられることが多い。そして多くの人が、これらの力は一般的な「教える」授業では十分に身につかないと考えているだろう。

(Milatas/gettyimages)

 一方で、30、40人を一人の教師が指導する学校のスタイルは、一斉授業を基本としている。そこでは「先生の言うことをきく」「自分の好きなことは我慢する」といったことが子どもたちに求められる。これらによって本来子どもがもつ学びへの好奇心というものが失われていくのではないだろうか。

 「教えない授業」を実践する、横浜創英中学・高校の副校長である山本崇雄先生はそのように考える。「教えない授業」では、子どもたちが「学び方」を身につけられるよう、様々な工夫がなされているのだ。その神髄を、8月27日(水)の鼎談イベントにて、志を同じくする工藤勇一先生、木村泰子先生とともに、語り尽くす。その一端を、まずは記事でわかりやすくお伝えしたいと思う。

セミナー詳細はこちら

<目次>

・工藤勇一×山本崇雄 子どもたちに主体性を取り戻す「学び方改革」

・工藤勇一×山本崇雄「技術がない教員は子どもを救うことができない」

・水が怖くて仕方なかった子どもが水泳で全国6位になれた「教師の問いかけ」

・教育実習で体感した1970年の「教えない授業」

・【なぜ「教えない授業」で飛躍するのか?】横浜創英”二刀流教師”山本崇雄が「子どもが選ぶ力」を最重視する理由

工藤勇一×山本崇雄 子どもたちに主体性を取り戻す「学び方改革」

工藤勇一さん(左)と著者(右)

山本:こうして工藤さんとじっくり対談するのは初めてですね。同じイベントに登壇して話す機会はありますが。

工藤:何だか照れくさい感じもしますね。今日はよろしくお願いします。

山本:工藤さんとは、学校改革の先にある学校の未来像についてお話ししていきたいと思います。振り返ってみると、僕が工藤さんと初めてお話ししたのは、僕の以前の所属校で授業を見学してもらった時でした……

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工藤勇一×山本崇雄「技術がない教員は子どもを救うことができない」

山本:工藤さんは改革を進める中でよく「リスキーな方向にシフトしないように気をつけよう」と僕たち教員に語りかけていますよね。この言葉の真意を改めてお聞かせください。

工藤:何かを改革しようとすると、人はつい気心の知れた近しい人だけを集めて物事をスムーズに進められるイケイケのチームを作ってしまいがちです。しかしその進め方では、組織内の一般的な考え方とは乖離が生じてしまうかもしれない。この「リスク」を避けるためには、自分とは最も考え方が離れた立場の人をチームに引き入れることが大切。組織や物事のあり方を変えるために、遠回りをするべき時もあるんです。

山本:思い返せば、僕が 『なぜ 「教えない授業」 が学力を伸ばすのか』 (日経BP)を執筆した時も、考え方が真逆の教員が学年にいたからこそ、自分の理念が分かりやすい言葉になったんだと思います。その時、自分の意見に反対する人というより、異なった意見を持った人と対話するという感覚が生まれました。

工藤:私自身、プロジェクトを立ち上げる際には必ず自分とは正反対の考えの人を入れていますから……

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水が怖くて仕方なかった子どもが水泳で全国6位になれた「教師の問いかけ」

(jaimax/gettyimages)

山本:泰子さんには、以前にも横浜創英や新渡戸文化学園の子どもたちのために授業をしていただきました。その時もそうだったのですが、僕と話す時も必ず「今日は一緒に学ばせていただきます」とおっしゃりますよね。僕たちの世代や、もっと若い世代の教員や子どもたちにも常に対等に接していただき、僕もいつも心強く思っています。

木村:ありがとうございます。みんなそう言ってくれはるけど、私は日本中の先生たちや子どもたちのことを、ともに未来を考える仲間だと思っているんですよ。

山本:まさに泰子さんには対等なコミュニケーションの視点がいつもあるんですよね。今回の対談では、誰も取り残さない「みんなの学校」を日本中で実現していくにはどうすればいいのか、じっくりうかがえればと思っています。まずは泰子さんのキャリアの原点についてお聞きしたいのですが、泰子さん自身はどんな子どもだったんですか?……

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教育実習で体感した1970年の「教えない授業」

(Milatas/gettyimages)

木村:崇雄さんの「教えない授業」は、とてもインパクトの強い言葉だと思います。私にとって「教えない授業」は何の違和感もなく入ってくる言葉でしたが、崇雄さんが初めて本を出した時には、日本の教育現場にまだまだ古い考えの人がたくさんいたはず。崇雄さん自身は教えない授業を受けて体感したことがあったんですか?

山本:いえ、僕は子ども時代から従来型の教える授業しか受けたことはありませんでした。

木村:それなのに、なぜ教えない授業の概念にたどり着いたんでしょうか……

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【なぜ「教えない授業」で飛躍するのか?】横浜創英”二刀流教師”山本崇雄が「子どもが選ぶ力」を最重視する理由

現役の教師という立場で、従来の学校現場での「教え方」を見直すなかで「教えない授業」を提唱し、改革を実行している横浜創英中学高等学校副校長・山本崇雄先生。生徒の主体的な学びを重視し、自学力を高めるこの方法は、いまや教育現場だけでなく、多くの企業でも注目され、執筆や講演なども行う「二刀流(複業)の教師」として活躍しています。教育関係者そして教育問題を意識するビジネス界の人々との対談を通じて、あるべき子どもの未来、教育の未来の姿を語った『「教えない」から学びが育つ』(ウェッジ)の刊行にあたり、「教えない授業」を実践することの意義を、先生に伺いました。
*撮影時の状況により、一部聞きづらい箇所がございますが、字幕を掲載しておりますので、ご了承ください。
*聞き手:ウェッジ・クロスコンテンツ室

【タイムテーブル】
00:00 イントロ
00:21 日本の教育の問題点
01:15 「教えない授業」の本質
04:25 「自分で選択する」ということ
07:28 最適な選択を考えていく力
10:27 「教えない授業」は受験に不利か?
13:00 「教えない授業」の意識改革

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