2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年8月27日

 欧州の首脳たちは、首脳会談がトランプとプーチンの結託によるウクライナへの圧力につながる可能性を懸念している。アナリストたちは、プーチンは戦争に勝利し、ウクライナを従属させ、軍事力と自衛力を剥奪し、北大西洋条約機構(NATO)加盟を阻止するという目標を達成できると確信していると述べている。

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プーチンとトランプで異なる「成果」

 今次米露首脳会談についてはその成果を懐疑的に評する論評が多く、本解説記事もその一つである。ここでは問題の所在を「プーチン・ペースで進むことのリスク」という観点で整理しておきたい。

 首脳会談は8月15日に実施されたが、「ウクライナの支配」というプーチンの戦略目標は変わっておらず、その目標に向けて米国を利用しようとするプーチンの思惑に沿って事態が進展しつつあるように見える。このままでは和平交渉の成果は期待薄であり、仮に何らかの合意が形式上成立したとしても、持続性のないものになるだろう。

 まず、首脳会談の受け容れは、プーチンにとっては対露制裁発動の期限 (8月8日) をさらに延期させることを意味する。実際トランプは8月6日の大統領令でインドに対する25%の追加関税を実施することとしたが、それ以上の措置はとっていない。「交渉」を「停戦」に先行させるやり方は、これまで何度も繰り返されてきたプーチンの遅延戦略である。

 次に、直接首脳会談は、ウクライナ和平の問題についてトランプ側を劣勢に置くことに繋がった。これもプーチンの狙い通りである。今の状況で首脳会談を行う場合、ウクライナ問題について成果を出せるかという問題のもつ意味は、プーチンとトランプでは大きく異なる。

 すなわちプーチンにとっては、仮にウクライナ問題で何らの成果も出せなくても、その他の政治案件や経済面で成果があれば目的は達成されるし、そうならない場合でも米露首脳の直接会談の実施それ自体に意味がある。これに対しトランプの方は、正にウクライナ問題で何らかの成果を出すことが求められ、この点においてトランプは守勢に回らざるを得なくなる。


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