2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年8月27日

 プーチンはトランプの大統領就任の直後から、トランプとの直接会談を望む意思を公言していた。その背景には、次のようなプーチンの基本的な対米・対トランプ戦略がある。

 ①ロシアが米国と並ぶグローバル・プレーヤーの一つであることを世界に示すこと、②その中でウクライナ問題を矮小化しロシアの自由度を確保すること、③対露関係の正常化は米国の経済的利益に適うと米国に認めさせること、④米露関係の正常化をもって欧州、さらには一定程度、中国に対する牽制とすること、である。

 8月9日のロシアのウシャコフ大統領補佐官による首脳会談にかかる発表文でも、アラスカを含む北極圏は「両国の経済的関心が交わる場」である等として、首脳会談に経済やビジネス関連のテーマが含まれることを示唆し、さらに「次回会合はロシアで開かれることを期待する」として、持続的な首脳会談の実施に言及している。

プーチンをどう停戦に押しとどめるか

 今後行われ得る合意で最重要の要素の一つは、ウクライナの安全の保証を担保する仕組みを整えることである。これはウクライナに対する利益ではなく、欧州全体の安全保障の問題である。

 重要なことは「ウクライナの支配」というプーチンの戦略目標は変わっておらず、仮に停戦が成立するとしても、これを押しとどめるメカニズムがなければ必ず同じことが繰り返されるということである。

 さらに、合意の順序について言えば、停戦の実施が最優先されるべきであり、その上で領有権の問題等を処理し、その進展度合いに応じて制裁解除ということが必要である。特に、対露制裁は「結果的に」解除されることを確保しなければ、合意順守のインセンティブをなくすことになる。

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