2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年8月29日

衝突は再燃の可能性も

 タイとカンボジアとの紛争に話を戻すと、タイ側もカンボジア側もこれで矛を収めるつもりはないようだ。一応、両国は停戦に合意したが、衝突が再燃するのは時間の問題かもしれない。

 つまり、タイ国軍は、この機会に係争地を力ずくで奪還しようと考えている由であり、既に係争地11箇所を占領中で、愛国心を高揚させているタイ国民も軍を支持している。他方、フン・セン元首相は、タイ国軍には抗し得ないことは承知の上で衝突を拡大させ、国際世論を喚起して本件を国際司法裁判所(ICJ)に持ち込み、有利な判決を得ようとしているのではないかとみられる。

 1959年、カンボジアは、両国国境地帯の係争地であったプレア・ビヘア寺院の帰属を巡ってICJに持ち込み、国際世論の圧力によりタイ側に応訴を強要し、勝訴した前例がある。既にカンボジア側はICJに書簡を送り、最近の一連の国境紛争についてICJの介入を求めているが、介入の根拠として本件はプレア・ビヘア事件に関係する問題だと主張している由だ。

 他方、タイは、タイ軍兵士の地雷による負傷が相次いでいることをめぐり、カンボジアを国際刑事裁判所(ICC)に提訴する方針を表明している。当然ながらカンボジアはこれに反発している。

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