プーチンのトランプに対する自信
米世論は、トランプの交渉能力と米ロ首脳会談をどのように見たのだろうか。英誌エコノミストと調査会社ユーガブによる全国世論調査(8月15~18日実施)によれば、「ドナルド・トランプは、どのぐらい効果的に外国のリーダーたちと交渉をしていると思うか」という質問に対して、23%が「非常に効果的である」、18%が「いくらか効果的である」、16%が「あまり効果的ではない」、34%が「全く効果的ではない」、9%が「分からない」と回答した(図表1)。
「効果的ではない」の合算は50%で、「効果的である」の41%を9ポイント上回った。トランプは「取引の達人」と呼ばれているが、今回の会談ではその達人ぶりは発揮されていなかった。
また、「トランプとプーチンのアラスカでの会談でウクライナにおける平和に関して、どのぐらい前進したと思うか」という質問に関しては、7%が「大いに前進」、25%が「少し前進」、42%が「全く前進なし」、27%が「分からない」と答え、全く前進しなかったと捉えている米国民が最も多いことが分かった(図表2)。
さらに、同調査では、プーチンに対する米国民の好感度は、「好感が持てる」(「非常に」と「いくらか」の合算、以下同)が8%、「好感が持てない」が82%であった(図表3)。ただ、全体で73%が、プーチンを「強いリーダー」と捉えている(図表4)。ちなみに、2024年米大統領選挙でトランプに投票した有権者に限ってみると、84%がプーチンは強いリーダーであると答え、全体よりも11ポイント上回った。
米国民は侵略者であるプーチンに対して、好感は持てないが、強いリーダーであると認めている。一般に、米国民は強いリーダーを支持する。その強さは、権力であり、肉体的強さであったりする。故に、この調査結果の「強い」には、独裁的リーダーという意味が込められている可能性が高い。
プーチンは、トランプが有利な取引を引き出す目的で使う脅しや警告を「空虚な脅し」と捉え、制裁期限や人間関係を操作によって変えられるという自信を持っているに違いない。今後の交渉も、トランプの取引力に対するプーチンの操作力の優位性が、交渉の結果を大きく左右する要因になると言える。




