2025年12月5日(金)

World Energy Watch

2025年9月2日

 IRRが何%以上であれば、事業に踏み切るかは、企業により、事業により異なる。リスクの見方、その時の資金の使途などの状況によるからだ。低金利の日本の状況下では、かなり低いIRRでもゴーアヘッドになるかもしれないが、IRRが2%、3%のプロジェクトを手掛ける事業者はまずいないだろう。

 事業者の試算を知る術はないが、IRRはマイナスではないが、諸手をあげて進められる収益性でもなかったと推測される。三菱商事は事業投資に踏み切ることが何とか可能なIRRになるような電気の売値で入札したのだろうか。

 三菱商事は、投資額が2倍以上に膨らんだと発表しているが、そうなれば、IRRはマイナスになり事業投資には踏み切れない。撤退しか選択肢はない。

これからの再エネ政策をどうするのか

 日本政府が洋上風力に力を入れていたのは、設備の大型化と規模の経済により設備費と発電コストが将来下がると考えていたからではないか。風況が欧州諸国、米東海岸よりも劣る日本近海での導入でも、欧米とのコスト差がやがて縮まり、競争可能になると考えたのではないか。

 事情は変わった(洋上風力の“法則”崩れる!事業者の「撤退」が相次ぐ理由 もはや諦めるしかないのか?)。設備と原材料の重要鉱物を中国に依存するようになる可能性が高く、電気料金を引き上げる洋上風力をどこまで伸ばすのが正しいのか。

 人口減少に悩む地元は事業に期待し、港湾などの整備に投資しているが、工事が終わった後の雇用はほとんどない。中国に対抗しての設備製造も難しく、地域振興も大きな期待はできない。

 生成AIを支えるデーターセンター用電力需要も大きく増えることが予想されている。24時間365日安定的な電力が必要なデーターセンターには、再エネ電源はあまり適していない。

 洋上風力の導入を続けるため制度を見直すのではなく、ガラガラポンで電力供給の姿の全体像を見直すべきではないか。安定供給と競争力のある電力価格は、苦しい生活が続く国民には極めて重要だ。

間違いだらけの電力問題
山本隆三 (著) ¥1,650 税込
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