2025年12月5日(金)

World Energy Watch

2025年9月4日

 カナダにとって最大の資源輸出先は米国である。24年、カナダ産原油輸出量の9割が米国に出荷された他、27BCMの天然ガスも米国へ輸出された。米エネルギー情報局(EIA)によれば、カナダから米国へのエネルギー輸出額は24年に124億ドルに達し、米国からカナダへの輸出額(27億ドル)を大きく上回った。

米国の脱中東石油依存への役割

 カナダのエネルギー輸出拡大は、米国の資源調達政策にとても重要な意味を持つ。米国は19世紀から国内で石油開発に取り組んでいたが、第二次世界大戦後の経済成長に伴い消費が拡大した結果、49年に石油の輸出国から輸入国へと転じた。

 石油不足に直面した米国は、国外からの石油調達に依存せざるを得なくなった。また、60年代に国内の産油量が減少に転じたことで、とりわけ中東地域への石油依存度は一層高まった。

 こうした米国のエネルギー事情を一変させたのが、シェール産業の発展である。シェール(頁岩)は、従来の技術では採掘が難しいとされていたが、10年頃から水圧破砕法(フラッキング)と水平掘削という新たな採掘技術が実用化され、商業的にも採算が取れるようになった。これにより、米国の資源生産量は増加に転じ、米国は世界有数の石油・ガス生産国としての地位を確立した。

 シェール産業の発展に伴う産油量の拡大を受け、サウジアラビアやクウェートといった中東産油国から米国への原油供給は大幅に減少した。米エネルギー情報局(EIA)の統計によれば、米国の原油輸入に占める中東産の割合は90年の30%から、24年には8%まで低下した。

 一方、米国によるカナダ産原油の輸入は、この30年余りで飛躍的に増大した。90年にわずか64万bpdにすぎなかったが、24年には6倍以上の406万bpdに達した。その結果、カナダ産原油の輸入シェアは中東産を凌駕し、61%に上昇した。

 このことから、米国でのシェール産業の発展に加え、カナダによる対米エネルギー供給の拡大も、米国の原油調達における中東依存度の低下に大きく寄与したと評価できる。


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