日本にとってもエネルギー供給国となるカナダ
カナダは日本にとっても石油・ガスの調達先として有望視される。日本にとってのカナダからのエネルギー輸入のメリットは、海上交通の要衝を避けられることである。
カナダから太平洋を横断することで、障害なく日本に届けられる。また、ホルムズ海峡に次いで、潜在的に航行リスクがあるマラッカ海峡や南シナ海も避けられるため、供給途絶リスクをある程度低減できる。
日本は24年からカナダ産原油の輸入を開始した。同年の輸入量は26万バレルにとどまったが、今年は上半期だけで55万バレル(総輸入量の0.1%)に達した。
また、カナダからの資源調達で際立つのは、液化石油ガス(LPG)のプロパンガスである。今年1~6月のプロパン輸入において、カナダは米国に次ぐ第2位の供給国となり、日本の総輸入量の18%を占めた(出所:財務省貿易統計)。
さらに、カナダからのLNG輸入にも期待が高まっている。日本の三菱商事が参画する「LNGカナダ」事業(年産1400万トン)は、25年6月末に輸出を開始した。同社は持分比率15%に相当する年間約210万トンを引き取り、主として日本向けにカナダ産LNGを供給する見通しである。
「LNGカナダ」事業には、地理的な優位性がある。同事業は西海岸のブリティッシュコロンビア州に位置しており、米国南部からのLNG輸出と異なり、パナマ運河を経由する必要がない。その結果、米国メキシコ湾岸からアジアまで約25日を要するのに対し、カナダ西海岸からアジアへの輸送は平均10日程度と大幅に短縮される。
カナダ西海岸では現在、複数のLNG生産プロジェクトも進行中である。ブリティッシュコロンビア州スクアミッシュ近郊での「ウッドファイバーLNG」事業(年産210万トン、27年稼働予定)、同州キティマットでの「シダーLNG」事業(年産330万トン、28年稼働予定)、そして同州ギンゴルクスでの「クシ・リシムスLNG」事業(年産1200万トン、30年稼働予定)、である。
これらの事業により、カナダのLNG年産能力は3000万トンを超える見通しである。日本はLNG調達先の多角化、ひいてはロシア産LNG依存からの脱却という観点から、カナダ産LNGを積極的に輸入することが望ましい。
日本は西側陣営の一員としてウクライナ支援に取り組む立場にあるものの、依然としてロシアからのガス供給に一定程度依存しているのが現状である。25年1~6月における日本のLNG輸入のうち、ロシア産は総輸入量の9%を占めた。
ウクライナ戦争の展開次第では、欧米諸国が日本に対し、より迅速かつ本格的な脱ロシア政策の実施を求めてくる可能性もあり得る。こうした状況を踏まえると、カナダ西海岸におけるLNG産業の発展は、日本のエネルギー安全保障を強化する上で今後ますます重要な役割を果たすだろう。

