アメリカン・イーグルのキャンペーンと同時期に、米国のファッション大手GAPもデニムについての広告を展開した。目の青い白人を打ち出してジーンズを宣伝したアメリカン・イーグルと異なり、GAPは人種や民族的背景が異なるグループKATSEYEを起用し、多様性を強調するジーンズのCMを打ち出した。
このダンス動画は、様々なソーシャルメディアで再生回数記録を更新し大成功となった。米国社会全体が右に寄ってしまったわけではないことがわかる。
ただ、今回のアメリカン・イーグルのCMがもしトランプ政権一期目以前に登場したならば、おそらく大きな不買運動が起き、制作側は謝罪に追い込まれ、シドニー・スウィーニーのキャリアは暗澹たるものになったのではないだろうか。それがトランプ政権二期目においては、批判はあったものの、ホワイトハウスから称賛され、売り上げが伸び、株価が上昇したのである。
保守派が盛り返しているのか
明らかに米国社会の雰囲気が変わったのが感じられる。以前は多文化主義を支持しないと公に表明することが多くの場面でためらわれたのが、トランプ政権二期目に入った今日、そのようなためらいは必要ないと感じている人が多い。なぜ昔のように、目が青く金髪の白人を讃えてはいけないのか、なぜ非白人に気を遣って遠慮しなければならないのかというのである。
第二次トランプ政権発足に伴いDEI(多様性、公平性、包摂性)の推進が中止されて以降、広告において白人モデルの使用が増えているという指摘もある。このアメリカン・イーグルのCMの顛末は、保守派が「文化戦争」において大きく盛り返しつつあるのを表しているといえるのではないだろうか。
